Special Interview 最高醸造責任者 エルヴェ・デシャン ベル エポック 2000への想い
華やかなアネモネの奥に潜む情熱と信念。最高醸造責任者に編集長・岩瀬が聞く
1811年の創業から197年。これだけの長い長い歴史の中で、ペリエ ジュエの最高醸造責任者を務めたのはたった7人。その要職に93年に就いて以降、独自の感性を生かしたアプローチで世界中にペリエ ジュエ、そしてベル エポックの華やかな世界を広げ続けているエルヴェ・デシャン氏に登場いただき、最新ヴィンテージである2000のこと、シャンパーニュ造りに対する信念などを伺った。
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2004年の初来日から、今回が8度目の来日。まずは、この間の日本のシャンパーニュ・シーンの印象をお聞かせください。
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4年前に比べますと非常にシャンパーニュが浸透しています。市場の拡大というだけではなく、日本人の生活の中に浸透しているという印象があります。以前は限られた人たちが楽しむ飲み物であったと思うのですが、今はより多くの方々が、よりさまざまな場所で、さまざまな料理とともに楽しむ…そんな素晴らしい状況ではないでしょうか。その中でベル エポックも愛されていると感じます。 |
それでは、ペリエ ジュエならではの特徴をご紹介ください。
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ペリエ ジュエの繊細さ、エレガントさ。それは質の高いシャルドネからもたらされています。主にクラマン、そしてアヴィーズといった村から獲れるシャルドネが、まるでシルクのような滑らかさをもたらしてくれます。そして、ペリエ ジュエ社が所有しているブドウ畑にも触れなければいけません。非常に質の高いブドウ畑を所有しており、それが変わらぬ品質の高さを維持するために大きな役割を果たしています。 |
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今回、待望のベル エポック、2000年ヴィンテージがリリースされます。2000年という年はベル エポックにとってどんな年だったのでしょうか?
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花が咲くまではとても順調だったのですが、その後は雨が多く、一部の畑では不安があるところもありました。しかし、夏にかけては非常に天候がよくなり、昼間は日光が十分あり、反対に夜は気温が下がり、ブドウが酸味を維持するために非常に理想的な展開となりました。そのため、特徴としてはまずシャルドネのフレッシュさというのが挙げられます。非常に順調な展開でした。
ただ1月末の時点で多少ピノ・ノワールに関しては香りが開いていくまでに時間がかかり不安がありました。しかしこれも最終的には理想的な状態になり、そこでアッサンブラージュができると決断ができたのです。
2000年とは関係ありませんが、2001年は非常に雨が多く降り、寒い年でしたので、残念ながらブドウの質が悪く、酸味と甘味のバランスが壊れています。ですから2001年はリリースされません。
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2000の特徴をお聞かせください。
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まず香りに関しましては、最初に花の香り。その香りが、その後にさらに飲みたくなるように誘ってくれます。味に関しましては非常にチャーミングな味わいと言えるでしょう。アタックは口の中で花火が起こっているような感覚。その後味わいが非常に長く続くことも特徴でしょう。 |
エルヴェさんは、ヴィンテージごとの個性というのを強く打ち出す方向性ですか? それともベル エポックという世界観を大切にし、この中で、個性はニュアンスということで伝える方向性でしょうか?
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どちらかといいますと後者にあたると思います。やはりペリエ ジュエ、そしてベル エポックのスタイルというものを守りながら、その中でその年の特徴を出していくことを心がけています。当然ながらノンヴィンテージ ブリュットとは違いまして、やはりその年その年の自然がもたらしてくれる微妙な違いというのが出てくると思いますが、その違い以上に何か大きく手を加えるということはしません。 |
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2000のマリアージュの提案をお願いします。
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そうですね、冬であれば帆立、あるいはカニのような前菜と合わせられます。スズキのような高貴な魚、甲殻類も良いですね。いずれにしてもベル エポック 2000の、ミネラルの効いた部分と合うものが良いでしょう。和食ではお刺身も合うと思います。 |
2000はどういうシーンで飲んでいただきたいシャンパーニュですか?
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2つのシーンがあると思います。1つめは人々が集まり、楽しみを共に分かち合う瞬間。そこで食前酒として楽しむというシーンを想像します。2つめは食事とともに。和食でもフレンチでも。ただワインを楽しむ、ただ食事を楽しむというよりも、その両方を合わせながら楽しんでいくというシーンですね。 |
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ここでちょっと砕けた質問になるのですが、ベル エポック98、99、そして2000 ヴィンテージを、女性に例えるとすると?
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（笑）。了解しました。それでは例えましょう。まずは3ヴィンテージ共通で、非常に笑顔がある女性であり、ウィットに富み、活動的な女性ですね。98年は、40代ぐらいの女性で、非常にダイナミックで周囲や社会に対して大変影響力のあるタイプの女性を想像します。99年はやはり同じぐらいの年の女性ですが、どちらかといいますともう少し落ち着いた…プールサイドで椅子にくつろぎながら、その時を楽しんでいるような感じの女性ですね。
そして、2000年は3人の中では一番若く、まだちょっと青さがある。ただその隠れた才能が将来…未来に向けてとても輝きを感じさせるような女性ですね。 |
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エルヴェさんが女性として好きなのは?
私は完璧に2000年です（笑）。それにしてもシャンパーニュお造りになられている方は、例えが本当にお上手ですね。
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もちろん女性に例えることばっかりやっている訳ではないですよ（微笑）。 |
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最高醸造責任者として15年。ポジションに就いたときと現在で、変わっている部分と変わっていない部分、そして、変えたくない部分を教えていただけますか?
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変わらないものとしましては品質の追求、そしてペリエ ジュエのスタイルを維持するということです。変わったものというのは、それは時間とともに得てきた経験、自信でしょうか。例えば2001年のようにベル エポックを造らないと判断をする際に、今は自信を持ってこの年は造らないという決断ができます。以前はよりストレスを感じて、造らないという決断をすることが非常に難しかったですね。やはり経験が助けてくれていると感じます。 |
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では今後、やってみたい、変えてみたいというものはありますか?
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私の前の6人の醸造責任者が築き上げてきたものを変えることはできないと思います。白いアネモネを青くするというようなことは（微笑）。私ができることは、より多くの人たちにペリエ ジュエを、ベル エポックを楽しんでいただくということ。そのために質の高いブドウを仕入れ、造っていく。それだけでも十分大きなチャレンジだと思います。
理想的なブドウが収穫できるか、常にプレッシャーとの戦いです。それを経て、アッサンブラージュをし、試飲…これは最も幸せな瞬間ですね。1年間を通じてシャンパーニュ造りに関わってきた人たちの集大成がそこにあり、2000年のように素晴らしいものが出来上がったと判明するとき、とても幸せです。 |
幸せですがとても怖い瞬間ですよね。
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私には子どもが3人いるのですが、子どもが産まれる瞬間と同じです。とても感情が高まるときでもあり、逆に自分に非常に誇りが持てるときでもあります。そして子どもたちが成長して世界に羽ばたいていくのと同じように、ベル エポックも同じように羽ばたいてほしい。 |
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ベル エポックは華やかなイメージが先行している感もありますが、今回伺ったエルヴェさんの喜び、苦悩、こだわりを聞くと華やかさの奥にある情熱と信念を感じます。最後に日本のシャンパーニュ・ラヴァーたちにメッセージを。
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当社の商品を楽しんでいただいて、そして造り手を信頼していただいていることに対して、まずは感謝を。ちょっと先になってしまいますが2008年についてここでうれしいご案内を。今年の収穫が終わりまして、試飲は全部は終わっていないのですが、非常にいいものが造れそうです。ぜひ楽しみにしていてください。またその時…何年か先ですけれど私もまた日本に戻ってきます。 |
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ペリエ ジュエ7代目の最高醸造責任者。93年に現職に就いて以降、1811年の創業から続く伝統をシャンパーニュの地で守りながら、世界ブランドとしての使命を全うするべく世界を駆け巡る。知日派としても知られ来日経験も豊富。
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