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INTERVIEW

SHレポート
『ペリエ ジュエ』 最高醸造責任者 エルヴェ・デシャン氏 インタビュー

SH エクスクルーシヴ インタビュー

1811年にシャンパーニュ地方エペルネに創設されたペリエ ジュエは、今年で創業200周年を迎えます。この長き歴史の中で、現在7代目の最高醸造責任者を務めるエルヴェ・デシャン氏の来日を記念し、老舗日本料理店『つきぢ 田村』にて『ペリエ ジュエ ベル エポックと日本料理 マリアージュの会』が開催されました。今回のSHレポートは、エルヴェ・デシャン氏(以下D)と、昨年「現代の名工(卓越した技術者)」に選ばれた『つきぢ 田村』三代目料理長・田村隆氏(以下T)のスペシャル対談形式でお届けします。


01今回、日本料理とペリエ ジュエのマリアージュを初めて体験させて頂いたのですが、見事にマッチしていましたね。素晴らしかったです。
D:  魚や野菜をふんだんに使う日本料理には、ベル エポックの持つ純粋さやエレガンスがとても合うことがわかりました。ワインと食事はカップルですので、一方の個性が主張しすぎてはなりません。今回参加して頂いた皆様は、ふたつの思い出をお持ち帰りくださったと思います。とても美味しい和食であったこと、そして、ベル エポックと日本料理がとてもよく合うという思い出を。人は、人生の中で起こった楽しい出来事をずっと覚えているものです。例えば、誰かと喧嘩しても、その人と分かち合った楽しい時間のほうがずっと強い思い出として残っているでしょう? ペリエ ジュエでは、葡萄品種自体が持つ純粋さとエレガンスを活かすということを大切にしているのですが、それによって、女性も、男性も、初心者も、愛好家も、すべての皆さんに楽しみが与えられるような、できるだけ多くの喜びが長く維持できるような、そんなワインを造りたいといつも考えているんです。


02ワインの醸造家として、料理人として、召し上がってくださる全てのお客様の為に、日々様々な努力を重ねていらっしゃると思います。時には辛いこともお有りなのでは? T:  それは全く無いですよ。

D:  ただ、自分が好きだという思いを、皆さんと分かち合いたいのです。

T:  僕に依頼されるお題には変わったものが多いのですが、負けず嫌いで打たれ好きだから、日々色々な事に挑戦させてもらっています。それが後になって、「なるほど、こんなふうにすると喜んでくれるんだ」という実感に変わるんです。今回も、『シャンパーニュと和食』というお題を与えられて、最初は「どうする?」と思ったけれど、ベル エポックには、苦味がないとか、エレガントという事は知っていた。そんな繊細なワインに合わせる料理は何か、お互いが慈しみ合う方法は何かと考えて、その結果を形にしてみただけです。


03「慈しみ合う」、いい言葉ですね。

T:  料理は主張したいけど、邪魔はしちゃいけない。あえて今回は、講釈を聞きながら、言いながら、テストしながら作っていったけれど、本来はそうじゃない。召し上がって頂く方に、「これって○○じゃない?」とか「これとこれって、どう?」とか、そんなことを考えさせずに自然に楽しく流れていく時間が最高のマリアージュで、それを創っていくのが我々の役目だと思っています。

D:  ワインを造る時も、徐々に進歩するようにしています。最初に品質の良いものを選んで、より手の込んだワインになるように少しずつ変化を加えていく。例えば、『蛤めし』でのお米と蛤を組み合わせ。シンプルな素材同士を組み合わせることによって、完璧になりましたね。火の入れ方ひとつで、香りや味の濃縮度が変わっていった。

T:  火を入れすぎると、苦味が出たり硬くなったりしますからね。『天上鰤の照焼』では、クリーミーなバターで炒めた人参、照焼の甘いタレと共にワインを召し上がって頂くことで、両方のうまみが合わさって口の中に広がっていったと思います。


D:  料理やワインは、音楽に似ていますね。ピアノの名人、バイオリンの名人、いろんな名人が集まってオーケストラになることで、いい音楽が奏でられる。

T:  日本料理にはフォークとナイフがないので、”一口の大きさ”にこだわります。箸で一口に切り分けられやすいように、隠し庖丁という技を使ったり。今日の鰤はポーションを小さくして、口の中でベル エポックと混ざり合いながら様々な味わいをお楽しみ頂けるようにしました。


04今回、個人的に大変興味深く感じたのは、口中で立体的な味わいをおぼえたことです。特に印象的だったのは、グラン ブリュットと前菜のマリアージュ。菊の花の苦味や、煮鮑の歯ごたえと実に良く合っていました。グラン ブリュットはピノ・ノワールの配合が高く、ワインの中にもアングルを感じられるからなのでしょうね。

D:  仰るとおり。いろんな面を楽しむことができましたね。

T:  食感や喉越も大事なんだよね。『柿と大根のなます』では、クリームチーズと柿に大根のシャキシャキ感を加えたことによって、3D的な味わいを感じられたんじゃないかな。

D:  田村さんの料理には、風味を超えるものがありますね。口の中でいろんな構造を楽しむことができる。『天上鰤の照焼』に添えられた叩き芋の食感は、甘いソースに次の次元を与えていた。

T:  普通、とろろ芋は「喉越し」の料理になるのですが、今回はすりおろさずに細かく叩くことでシャキシャキとした食感を残したんです。



今日頂いたお料理の中で、『つきぢ 田村』の味とペリエ ジュエのマリアージュを家庭でも気軽に楽しめるようなレシピがあれば教えて頂けますか?

T:  『柿と大根のなます』は簡単ですよ。材料は、柿1個と大根300g。まず、柿を砂糖でしんなりさせ、大根は塩をして柚子を絞ります。大根は、斜めに切ることでシャキシャキとした食感を残したまま柔らかくなります(なます切り)。大根の塩を抜いたら、柿を加えて、クリームチーズとゴマのペーストで合わせ、お醤油をちょっとたらせば出来上がりです。

06最後に、ペリエ ジュエの創業200周年を迎えるにあたっての、エルヴェさんの思いをお聞かせ願えますか。

D:  ペリエ ジュエの品質とメゾンの考え方をずっと守り続けてきているわけですが、200周年という大きな節目にあたっては、将来もブランドを存続させていくという決意で、未来を見つめながら迎えることが大切だと感じています。

ただ伝統を守るだけでなく、未来に向けた新たな挑戦を行なっていくということでしょうか。

D:  そうです。7代目のセラーマスターとして、ペリエ ジュエが100年後も皆さんの記憶に残っているためには何をすべきか、そういう事を考える必要があると思っています。その時には、僕はもうこの世にいないけれど。例えば、2011年のワインを手懸ける時に、長期熟成に耐えうるように造るとか。というのも、昨年1911年のワインをテイスティングした際、まだフレッシュで泡が出ていたことに感動させられたんです。1911年のワインを造った人は、100年後に飲む人に「美味しい」と言ってもらうことを目指して造ったわけではないと思いますが、私にとってひとつの刺激になりました。人生において、毎日新しい何かに挑戦することはとても大切です。この世に完璧なんてないけれど、良いものができた時には、更に良いものを目指して次に続けていく。それが私の挑戦に対する考え方です。

07田村さんも、『つきぢ 田村』の3代目として長き伝統を守っていらっしゃいますね。

T:  僕はもともと料理が好きなわけじゃなくて、仕事としてやっています。作って楽しむことが好きなんだね。だから、自分の晩酌の為に料理を作るなんてことは、絶対にしない。女房のほうが上手いし、飲まなくても全然平気だし。あっ、ペリエ ジュエは飲みますけどね(笑) 僕にとっての「伝統」とは、人が作ってくれるもの。ワインも、料理も、お店も、人との出逢いを大切にして、コミュニケーションをきちんとすることによって守られていくものだと思います。同時に、自分の後継を育てることですね。僕がいなくても大丈夫なようにしないと、その店は続いていかない。周囲のすべてに対して、「買って頂く、売って頂く」という謙虚さ、これこそが人を繋ぐコミュニケーションとして一番大事な事だと思っています。

なるほど。ところで、エルヴェさんは、ご自宅でもペリエ ジュエをお飲みになるのですか?

D:  夜は飲みませんね。家では水を飲んでいます(笑)

T:  僕だって、家では納豆とご飯だよ(笑)

PERRIER-JOUËT Grand Brut
ペリエ ジュエ グラン ブリュット

アッサンブラージュ: CH20%、PN40%、PM40%

つかの間の魅力的なフローラルの香りに続き、青りんご、パイナップル、白桃のエレガントな香りが広がる。最後に軽くブリオッシュのニュアンス。衝撃的で生き生きとした生命力、しっかりとした肉厚な風味。素直で飲みやすく、複雑さを兼ね備えた味わい。

PERRIER-JOUËT Cuvee Bell Epoque Rosé 2002
ペリエ ジュエ キュベ ベル エポック ロゼ 2002

アッサンブラージュ:CH40~45%、PN50~55%、
PM0~5%

シャルドネの繊細さやエレガントさに、ピノ・ノワールが豊かなボディとふくらみを与えている。フローラルの香りや、赤い果実のフルーティさが見事に絡み合う奥深い味わい。ボトルにあしらわれたアネモネの花と美しいサーモンピンクの色合いがあいまって、華やかさを演出する。

PERRIER-JOUËT Cuvee Bell Epoque 2002
ペリエ ジュエ キュベ ベル エポック 2002

アッサンブラージュ: CH55%、PN40~5%、
PM0~5%

コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュのシャルドネを主体に、ピノ・ノワールのフルーティさが加わり、調和のとれた優雅さを持つ味わいに仕上がっている。深みのあるイエローの色合い、フローラルの香りが立ち上がり、その後レモンのような柑橘系の香り、続いて熟した果実の香りが広がる。繊細かつ深みのあるバランスのとれた味わい。

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