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INTERVIEW

SHレポート
『アグラパール』 生産者インタビュー

SH エクスクルーシヴ インタビュー

【アグラパール概要】
1894年、コート・デ・ブラン地区の中心地の一つアヴィズに、現当主の曽祖父アルチュール・アグラパールにより設立され、現在パスカルとファブリスによって運営されています。全てのシャンパーニュは人の手によってルミュアージュ(動瓶)されており、最近では耕作に馬を用いたりするなど、二人のシャンパーニュへの熱意が垣間見えます。

今回初来日でもあるパスカルさんと、同行されたナタリーさん。シャンパーニュ造りに対してとても誠実なイメージを受けました。初来日の緊張を感じさせること無くリラックスした様子でそれぞれのキュヴェやシャンパーニュに対する思いを語っていただきました。


18_ph_01アグラパールと言えば、ブラン・ド・ブランというイメージが非常に強いのですが、創業当時からお持ちの畑はすべてシャルドネ畑なのでしょうか? また他のブドウも栽培して、意図的に使用していないということでしょうか。

PA: 自分たちが所有している畑の大半はシャルドネ畑で、もちろんそれ以外のブドウを作っている区画はありますが、自社のシャンパーニュには使用していません。創業当時は4haだったのですが、以後、買い足しで現在は約10haの畑をもっています。10haのうち8haはグラン・クリュで、クラマン、アヴィズ、オジェ、オワリィの4村、残りはプルミエ・クリュのアヴネィ・ヴァル・ドール、ベルジェール・レ・ヴェルテュ、マルデュイユの3村の区画です。

大変よい村に畑をお持ちですね。これらのグラン・クリュは日本のシャンパーニュファンの間でもとても有名な村です。

PA: コート・デ・ブランには6村しかグラン・クリュはありませんので、メニルとシュイイ以外の全ての村に畑をもっていることになりますね。

それでは作られているシャンパーニュついて伺いたいのですが、現在発表されているそれぞれのキュヴェの特徴を教えていただけますか。

PA: わかりました。では一つ一つ説明します。まず。最もスタンダードな『レ・セット・クリュ』は7つの区画という意味です。先ほど7つの村に畑を持っているとお話しましたが、これら7つの村のブドウを使ったキュヴェですので、この名前をつけました。プルミエ・クリュも入っていますので、グラン・クリュ表記はされていませんが、レ・セット・クリュで表現したいことはアグラパールのシャンパーニュを語る上での全体的なイメージです。そしてこのキュヴェはマルチ・ヴィンテージです。基本的に2つのヴィンテージのブレンドをおこなっています。これは収穫年と、収穫年の1年前のリザーブワインとの組み合わせです。


18_ph_03テロワール』は使っているブドウがグラン・クリュのみとなりますので、4つの村の区画から作られています。このテロワールで表現したいのは、コート・デ・ブランのグラン・クリュの印象です。しかも4つのグラン・クリュの中でも樹齢の20年~40年という古木のブドウを使用しています。先ほどお話したレ・セット・クリュには10年からとグラン・クリュの中でも比較的若樹のブドウが使われています。

ここから紹介する3つのキュヴェはヴィンテージ表記があります。『ミネラル』、『ラヴィゾワーズ』、『ヴェヌス』とこれら3つはコンセプトが異なります。まずミネラルで表現したいものは。私が持っている区画の中でも非常にミネラル分の多い区画のブドウが使用されます。そしてラヴィゾワーズは比較的粘土質の多い区画のものを使用しています。ヴェヌスはその両方を兼ね備えた区画のブドウを使用しています。つまりこれら3つのキュヴェは土壌のタイプで分けられています。


18_ph_02アグラパールのシャンパーニュは非常に生産量が少なく年間9~10万本だと伺っていますが、説明いただいたキュヴェの本数の内訳を教えていただけますか。
PA: 約半数の5万本ほどがル・セット・クリュで、テロワールは約3万本ほどです。ミネラルは約1万本、ラヴィゾワーズは約3~4千本、ヴェヌスにいたっては2千本ほどです。もともとヴェヌスに使用される石灰と粘土質が混合した区画は30Aほどしかありませんので、どうしても生産本数は少なくなってしまいます。前回日本には60本ほどしか輸出されていませんでした。

なるほど、私もアグラパールのシャンパーニュは何度もいただいたことがあるのですが、ヴェヌスはほとんど市場で見かけたことがありませんでした。さてアグラパールといえばブラン・ド・ブラン以外にも自然農法にもこだわっているというイメージがありますが、具体的にはどのようにおこなっているのでしょうか。

PA: 私は良いブドウを作るためには自然農法を行わなければならないと考えています。キュヴェ・ヴェヌスで使用される30aの区画は実験的に馬で工作しています。馬は自重が軽いので鋤入れをするときに土を踏み固めることがありません。土を鋤入れするということは、土中に空気を送り込むことです。土の中に空気を送り込むと微生物環境が健全化され、土地が活性化されます。土地が活性化されるということは根がどんどん地中奥深くに伸びて、シャンパーニュの特徴である、石灰質の土壌に達してミネラル十分吸ってシャンパーニュの中に表現されると考えているからです。

しかし、この区画は実験的であって、その他の同じ地続きの区画は機械で耕作しています。同じ土壌で馬でやる場合と機械で耕作することによって味わいに差が出てくるのかという実験の区画なのです。ちなみにこのヴェヌスの名前の由来はボトルにも描かれているのですが、この土地を耕作している馬の名前なのです。もちろん自然農法は馬で耕作だけに留まらず。ヴェヌス以外の区画でも同様に殺虫剤、除草剤、薬液等は一切使っていません。


18_ph_05区画を限定して、テロワールを表現しているということですが、そうするとヴィンテージだけでなくNVの味わいも年毎変わってくるように思えるのですが、そのような認識で間違いないですか。

PA: 天候次第でそこまで大幅に変わることは無いと考えています。私が考えるシャンパーニュの味わいの75%はテロワールの個性だと考えています。残りの25%は醸造やその他の要因であったりしますが、テロワールというものは毎年簡単に変わるものではありません。ですから気候の変化があったとしてもシャンパーニュの味わいは大きく変わるものでは無いと考えています。

アグラパールのイメージが、数年前にエチケットが現在のものに変わり、より洗練されたイメージとなったように感じているのですが、変更するきっかけはなんだったのでしょうか。

PA: 現行品になる以前は15年同じエチケットで出荷していましたので、時代的にも古いかなと思ったのが1つです。もうひとつはアグラパールとしてのシャンパーニュの質が上がってきて、それぞれのキュヴェのコンセプトをはっきり打ち出したかったからです。

しかしエチケットが変化しても色は昔のエチケットを踏襲しています。現行品はテロワールやミネラルなど、新しいエチケットになってからコンセプトに関する名前をつけました。これによってキュヴェのコンセプトをお客様により分かりやすく伝えることができると考えています。


18_ph_06エチケットといえば、私が持っているエチケットを見ていただいてよろしいですか。このエチケットのシャンパーニュは現在取り扱いが無いようにお見受けするのですが、このシャンパーニュは何なのでしょうか。

PA: これはミレニアムの時のキュヴェですね。当時ミレニアムの年はシャンパーニュだけに限らずフランスでも特別なボトルやエチケットが作られていました。この時のコンセプトは女性とシャンパーニュというコンセプトで2000年のヴィンテージに使われました。中身は93年と94年で現在のテロワールと同じ位置付けのキュヴェ。ミレニアムボトルですので当然現在は販売していません。

エチケットの話は気になっていたので、とてもすっきりしました。さて食事との組み合わせも伺いたいのですがそれぞれのキュヴェをどんな食事と組み合わせるのが理想だと考えていますか。

PA: まず、全てのキュヴェは食前酒に適しています。仕事が終わってから飲み始めるにはレ・セット・クリュがよいのではないでしょうか。その上で、テロワールは魚介類との相性が良いと考えます。ミネラルを楽しむのであれば、魚でも更に強いもの、例えば網焼きにしてソースをつけたものなどですね。ヴィンテージには鶏肉や仔牛などをあわせるのが良いでしょう。

日本食ということを考えるとシャンパーニュの中でもピノ・ムニエやピノ・ノワールを使ったものより、ブラン・ド・ブランはとても良いと思います。和食のほとんどがスパイシーではないですよね。ごはんは非常にニュートラルな食べ物ですがアミノ酸が感じられます。魚もフレッシュなものが多いので。


18_ph_07それでは最後に、日本のシャンパンファンに一言いただけますか。

PA: ブラン・ド・ブランの造り手の代表として、シャンパーニュはこちらに来て日本食にあうということを発見しましたので、皆さんいろいろな発見をしてみてください。様々な挑戦、いろんなシチュエーションで楽しむ機会をどんどん増やしていただければうれしい限りです。私達のシャンパーニュについていえば、大手のシャンパーニュとは異なり、テロワール主体のシャンパーニュなので、大手のアッサンブラージュを中心としたシャンパーニュとはまた違う表現、違ったスタイルのシャンパーニュとして楽しんでください。

エチケットが変わりテロワール別にネームが入り個性の違いがより分かりやすくなったアグラパール。コート・デ・ブランノのテロワールを感じるには最適のシャンパーニュでしょう。まだ夏の暑さが残る季節。それぞれのテロワールを飲み比べてみても面白いのではないでしょうか。

またインタビューでのエチケットの疑問は気になっていたディープ・シュワリスタは多いのでは無いのでしょうか? 実は数年前にインポーターさんや生産者にも同様の問い合わせがあったようです。

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