厳しい気象、社会状況を反映。シャンパーニュの2024年収穫可能量、前年減で合意
シャンパーニュ委員会日本事務局より、『シャンパーニュ、今年の収穫について』のレポートがあった。ハイライトのいくつかを紹介する。
まず、収穫可能量はさまざまな課題、現状を鑑み、2023年の11,400kg/haから11,000kg/haに設定された。
出荷量については、過去最高を記録した昨年の上半期に比べ15.2%減。2019年のレベルに戻っているという。これには、「世界的な地政学的・経済的状況の低迷と、広範囲にわたるインフレが家庭の消費を圧迫している。シャンパーニュは2021年と2022年の流通業者による過剰在庫の影響を受け続けている」(シャンパーニュ委員会)という要因をあげている。
収穫量の減産の起因には今年の気象条件も関係している。「異例の雨量」とタイトルされているように、年初から多雨、日照不足、冷涼という育成のスタートが影響し、ぶどう畑全体でベト病への対応に苦心しているという。春霜、雹もあり、発育自体、ここ10年の平均より5,6日遅れ、現状では9月10日~12日ごろの収穫になる見込みだ。7月下旬、8月の好天、好転に期待したい。
シャンパーニュの地における収穫可能量とは直接大きなかかわりを持つ要因ではないかもしれないが、日本においても、円安基調、値上げラッシュなどもあり外食、家計における出費については抑制気味で、いわゆる“ハレ”の場に対する出費、マインドの変化もある。若年層のアルコール離れだけではなく全世代にわたってお酒、ワイン、シャンパーニュに対しての価値の見直しは確実にある。だが、シャンパーニュというエクストリームなテロワールにおいて、また歴史的な困難の中で、いつだってその局面を乗り越え祝祭を届けてくれた。困難のその裏で様々な尽力があり、今年も素晴らしいシャンパーニュが日本に届けられることだろう。困難な年にはその困難があるからこそのシャンパーニュがある。2003年のボランジェやモエ・エ・シャンドンのチャレンジは当サイトでも紹介したが、天候だけではなく社会情勢やマインドの変化、これからの持続可能性に向けた取り組みなど、大きな時代の転換を迎える局面。それでも「シャンパーニュ 生産者とメゾンは、自分たちのアペラシオンの価値に自信を持っている」というメゾン組合代表のダヴィッ ド・シャティヨン氏の自信は頼もしい。困難や忍耐があるからチャレンジもある。数年がたって届けられる2024年のシャンパーニュがグラスに注がれる瞬間を待ちたい。
レポート原文
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シャンパーニュ、今年の収穫について(PDF)
Text: daiji iwase