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カレンダーの日曜日は、赤い字。
この赤い字が単なる週の始まりを示すだけの記号と無意識に感じはじめたのはいつからだろう。
友人は休みの日。
街は休日モード。
いつものように昼と夕方にやっている長寿番組。
多くの人が活動を止め、自分に帰る日。
それが日曜日。 ランス駅はクラシカルな外観とモダンなコンコースが見事に調和。 それほど大きな駅ではないけれど、シャンパーニュの玄関口として 不思議な存在感がある。 2両編成の電車は、とてもローカル線とは思えないモダン・デザイン。
のんびりとランスとエペルネの間、シャンパーニュを生み出す畑の中。
いくつかのグラン・クリュ畑、無名ながらきっと素晴らしいぶどうを生む畑。
その中を縫っていく。
乗客はこの車両には僕とカメラマンだけ。
隣の車両には15歳ぐらいの女の子とマダム2人組だけ。
冬とは思えない陽光が温かい。
時間の経過を忘れる。
電車は移動手段のはずなのに、移動しているという感覚がない。
マダムは3つ目の駅でおり、そこで若い男の子が乗ってきた。
電車がおとぎ話のようなアイ村駅に静かに滑り込む。
女の子もここで降りた。 洋館のようなアイ村駅。そしてそこからアイ村に向かう1本道。 工夫のない表現になるけれど…フランス映画の1シーンに出てきそうな道。 ランスからアイ村まで。
そしてこのアイ村で。
不規則なのは、都会でいつでも便利な時間が与えられ、活動を止める必要をなくした自分で、
何もない、静かな日曜日という日を、1週間の中で過ごすというこの地の人こそ、
まっとうな人生を歩めるのかもしれない、と感じる。 緑の川にゆったりと釣竿を垂らすご老人。 なにが釣れるのかはわからないけれど、釣ることよりも時間を楽しんでいる風情。 夜、街に明かりはない。
その中で、おばあちゃんのレストランの扉を開ける。
濃い豚のテリーヌと、あっさりしたアルザス料理を思い起こさせる一皿。
かざらないシャンパーニュグラス。
地酒ならぬ、地泡とでもいうのだろうか。
家庭的すぎるこの店。
第二次世界大戦、何人もの若人が死地に向かっていく時。
もしかしたら、この同じ味の温かい料理で送り出してあげていたのだろうか。 男っぽい豪快な豚のテリーヌはおばあちゃん作。 こうやってシャンパーニュが並ぶと、気取らない地酒風になるから不思議。
変わらない、静かな日曜日。
ここで育つブドウたちも、彼らと同じように、
こんな静かな日曜日を過ごしているのだろうか。 内蔵の煮込みもどこかお隣のアルザス、ドイツ風。 乳製品よりもお出汁を感じる風味に胃袋が喜びを。 シャンパーニュの聖地には素朴な田舎料理がある。 |