invitation from MUMM
晩夏と初秋にマムの新作
「誇りの白」と「伝統の黒赤」を楽しむ
名門メゾンG.H.マムから、9月下旬、2つの新しい贈り物が届く。新ヴィンテージ、そしてリニューアルされた珠玉のブラン・ド・ブラン。狙い、特長、そしてシュワリスタらしい楽しみ方を、昨年に続き、最高醸造責任者ディディエ・マリオッティ氏に聞く。
夏と秋の間に、幸せなシャンパーニュ
マムから間もなく届きます
シュワリスタは「季節に合わせてシャンパーニュを選ぶ」という楽しさを知っている。2012年、夏と秋の間に、名門マムが新たな2アイテムをリリース。ゆ く夏を惜しみながら残暑に味わうグラン・クリュのブラン・ド・ブランの上質な爽やかさ。豊かな日本の秋に思いを馳せながら味わう、ミレジムに感じるピノ・ ノワールの本質。マム・セラーマスターのディディエ・マリオッティ氏とシュワリスタ・ラウンジの対話。醸造哲学、美味しいシーン…その中に幸せなシャン パーニュを楽しむためのヒントがある。
G.H.MUMM Millesime 2004
2004年という幸せな収穫を描写すること
よりマチュアでリッチ
表現と力強さに溢れたミレジメ
04という年の特徴を教えてください。 また02と比較してどのような年でしたか?
「02よりも04の方がよりマチュア(成熟・円熟感)、そしてリッチな年でした。酸味と糖分のバランスいい。収穫高が高く、各ブドウ畑で質のいいブドウがたくさん取れました。 ミレジメはどの年にリリースしなければならないというルールはありません。セラーマスターの判断で行うわけですけれど、我々がリリースする場合の目的は2 つ。ひとつはメゾンのスタイルを受け継ぐこと。マムであればそれはピノ・ノワールの表現。そして、その年の収穫を描写するようなものであること。それが出 来なければリリースはしません。 04で表現するもの、描写すべきものはやはりマチュアさとリッチさ。02年よりも表現すべきものがあり、より力強さとボリュームがある。02は控えめな良さがありましたので。比較すると圧倒的なパワーを感じるでしょう」
複雑で雄々しい男性的な魅力
アペリティフからメインディッシュまで
それではミレジメのテイスティングを
「良く熟れた果物を感じます。果汁の中に糖度が感じられるフルーツ。コンポートにした果物の複雑さ。ドライフルーツにしたアプリコット、キャラメルやヌ ガーの様なノートもあります。キーワードとしてはコンプレックス(複雑さ)、力強さ、雄々しさ。男性的な力強さを感じさせるシャンパーニュです。 フレッシュさとテンションがあって同時にボリュームも感じていただけると思います。良いバランスです。豊かなアロマとストラクチャーの緊張感があります。 アペリティフの後、メインディッシュでも楽しんでいただけるでしょう。あまりディープに調理、濃いソースと合わせた赤い肉よりも、ビーフのカルパッチョや白い肉があいます。 ま た、シーンとしてはお友達がテラスに集まってのアペリティフ。料理は、メッツア。中東レバノンのスタイルで、生野菜や肉や豆など、ブッフェのように一度に テーブルにたくさんのお皿が並びます。出してしまえばキッチンにいなくてよいので、みんなで心置きなく楽しめるんです。たくさんの味のコンプレックスと 04ミレジメのコンプレックスが素敵な世界を創るでしょう。 ブラン・ド・ブランが暑い夏でも楽しんでいただけるとすれば、ミレジメ04は、これからの秋にふさわしいシャンパーニュかと思います」
ふくよかさという美しさ
04という風景まで楽しむ豊かさ
さて、シュワリスタ・ラウンジ恒例の…女性に例えたら、という質問です。昨年、ロゼを郷里のコルシカの女性と例えられていました(笑)。ミレジメ04はいかがですか?
「私は詩人ではないので本当はお答えするのが難しいんですよ(笑)。そうですね、ミレジメ04は、お洒落なスクーターに乗っている、ふっくらしたぽっちゃ りした女性。ボリューム感があってなおかつチャーミング。マンガのキャラクターで言うと…ベティブーでしょうか(微笑)。 ブラン・ド・ブランは逆にスレンダーで足が長くて、バストも強調されていない雰囲気ですね」
それでは最後に、ミレジメ04を生み出すうえで苦しんだこととハッピーだったことを教えてください。
「苦しんだことは、最初の段階。04年はブドウの収穫量が多かったので、これをいかに素早くカットしてタンクに収めるか。とても短い時間の作業になりまし たのでこれは苦しみました。しかし、その苦労の後、初めてテイスティングした瞬間…この瞬間が最高の幸せでした。偉大なるミレジメになるポテンシャルを感 じましたから。ミレジメ04、ぜひ楽しんでください」
G.H.MUMM Blanc de Blancs
シンプルという最高の到達点を目指して
メゾンの歴史を
刻み続けるための新装
今回はメゾン誕生130周年を記念してのネーミング変更、そしてパッケージも赤リボンを纏ったエチケットに変更されました。従来からある「マム ド クラマン」と中身については変更がないようですね?
「はい、シャンパーニュ自体は変わりません。ひとつにはシンプルなメッセージにしたいという想いがりありました。というのも、海外のみならずフランス国内 でも、クラマンという地名と、クレモンという発泡性ワインを表す言葉が混同されていたという状況があったのです。しかも、最初、このシャンパーニュは、 『クレモン・ド・クラマン』と呼ばれていましたのでさらに混乱させてしまっていたようです(苦笑)。フランスでも各国でもブラン・ド・ブランという名前の 方が、白ブドウだけで作ったものだとご理解いただけて親しんでいただけるのではないでしょうか。
しかし、私にとっては、このクラマンという名前はとても重要。G.H.マムが、1882年、最初に白ブドウの畑を買ったのがここクラマン、そして最初のグ ラン・クリュの白ブドウを買ったのもこの地です。メゾンの歴史がここにあります。また、ブドウ栽培家の方々との強い絆もあります。彼らにとってもメゾンの キュヴェに自分のぶどうが使われているというプライドやエモーションがある。ですから、クラマンという名前を全て消すのではなく、その名前はエチケットに しっかり刻んでいます」
シンプルのためのバラエティ
そしてドゥミ・ムースという選択
クラマンのシャルドネ100%。どのような方法で個性を追及しているのでしょうか?
「アッサンブラージュの哲学として、複数の小さなタンクで醸造しています。まず、それぞれのタンクの個性の違いを出していく。ブラン・ド・ブランに関しては、タンクは絵の具のパレット。最終的に良いものを造るために、いろいろな絵の具が欲しい。
また、アロマがいろいろな方向に拡散してしまうことを避けるために、熟成期間は短めにしています。口にすると、個性がシンプルにストレート、かつダイレクトに感じられると思います。
ただし、シャルドネのフレッシュさだけを強調するとアグレッシブになりすぎます。そこでこのシャンパーニュのメソッドとしては、ドゥミ・ムースという圧を 抑える方法をとっています。普通のシャンパーニュは6気圧ですがこれを4.5気圧に抑えています。口に含んだときにまず、クリーミーさが感じられるでしょ う。一般的にブラン・ド・ブランは、長く熟成させることで酸味を柔らかくする方法をとりますが、マムでは、フレッシュさはキープしつつ違ったディメンショ ン(次元)を実現しています。
その中でクラマンのテロワールを出していきたいと考えています。クレモンは、「チョーク=石灰質の山」という意味で、石灰質が土の中に浅いレベルで存在しているので、ブドウが根を張るとすぐに石灰に到達します。その個性を感じられるかと思います。
そして、最終的にはシンプルなものであること。シンプルな面を出すことこそ私にとっては一番難しいこと。シンプルというのは決して不完全な状態ということではありませんから。その中でフレッシュさ、ダイレクトさがありつつボリューム感とバランスを実現しています」