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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.7
08.3.18 up

『ベレッシュ』当主インタビュー

text: 前田行紀 photo: 編集部 藤原
取材協力: 豊通食料ワイン本部

sH エクスクルーシヴ インタビュー

ベレッシュは1847年から続く家族経営のドメーヌ。ランスの南に位置するCraon de Ludesというモンターニュ・ド・ランスでも最も標高の高い地域にある小さな村を拠点に精力的にシャンパーニュを作り続けています。2004年からはすべての畑をビオロジックに移行し、2007年からは試験的に1haの畑でビオディナミを実践しています。

今回5代目となる若き当主、ラファエル・ベレッシュ氏(以下RB)とパートナーのPaulineさんが来日。若き当主のエネルギーにあふれるシャンパーニュ作りへの想いを、実際にテイスティングを行いながら伺うことができました。

今回は何度目の来日ですか? また日本で観光などはされましたか。

RB: 2回目です。今回は日本の観光も兼ねてパートナーのPaulineと共に日本の国の再発見ということで来ています。昨年の来日時は多忙で観光はほとんどできませんでしたので、今回は日本のワイナリーにはぜひ行ってみたいですね。そのほかには京都の町に非常に興味を持っているので、こちらもぜひ訪問してみたいと思っています。

なるほど、早速いろいろお話を伺いたいのですが、ベレッシュの特徴やこだわりはどんなところにあるのでしょうか。

RB: そうですね、まず大切なのは畑への思いやり、そして尊敬です。畑をどのように耕作していくかが大切です。ぶどう栽培がきっちりできていないと、良いシャンパーニュはできません。私自身も父と共に畑へ行き、そしてスタッフと一緒にいる時間を多く作っています。これは全員が同じ方向性を向いてシャンパーニュ造りをおこなうためには大切なことです。これは非常に些細なことですが、とでも重要なことだと感じています。

ぶどう造りにフォーカスすると2004年からは全ての畑でビオロジックを実践しています。醸造に関してもSo2を添加する以外はすべてビオロジックの考えを持っています。
たとえばひとつの特徴としてはバイオ酵母を使わないで天然酵母を使っています。そのためアルコール発酵が完了するまで通常より1〜1.5ヶ月長くかかり、ゆっくり発酵が促されます。

醸造の話がでたところで、昔は樽醗酵・樽熟成は当然のことでしたが、最近ではステンレスタンクでの醸造が一般的です。しかしベレッシュのシャンパーニュは樽を使っていますが、これにはどのような目的があるのでしょうか。

RB: ベレッシュの歴史では醸造に昔から樽を使っていました。ですから樽を使用することは今に始まったことではありません。

ステンレスタンクと違い樽を使うことで気をつけないといけないこともあります。特に新樽に顕著なのですが、ワインが樽負けをしてしまうことがあります。樽にいれるワインが弱いと本来のワインの味が隠れてしまい、ぶどう本来の香りが消えてしまいます。これは絶対に避けなければなりません。

私たちは毎年試飲をしてから樽を使うかどうかを判断します。しっかりした酸が残っていて、ボリューム感や果実味がないと樽熟成に耐えられない。しかし樽熟成が可能なワインは樽の作用でステンレスタンクに比べて良い熟成感が得られます。

私個人の意見ですが樽の使用はワイン全体の25%程度が理想的で、多くても50%までだと考えています。100%樽発酵させてしまうとボリュームがあって重く、エレガントさやフレッシュさを失ってしまいます。

私が樽に求めていることはワインに骨格と複雑味、そして広いスケールを与えるためであって、シャンパーニュに樽香を与えることではありません。

なるほど、樽と一言でいってもそれぞれの生産者によって想いが違うわけですね。ベレッシュのシャンパーニュの一部のリザーブワインは、ソレラシステムを採用して造られていると伺いましたが、この方法も以前から行っているのでしょうか。

RB: ソレラで作られたリザーブワインは、ルフレ・ダンタンに使われています。この方法を実験的にはじめたのは85年ですが、正式に市場に出したのは90年収穫のものが初めてになります。方法としては単純で。リザーブワインとして使用する1/3を樽に残しておいて、次の年に残り2/3を足していきます。次の年には2/3をリザーブワインとして使用し、同年のワインを2/3たしていきます。これを毎年繰り返しています。

日本でいう焼き鳥のたれみたいなものですね。さて最後になりましたが、日本のシャンパーニュファンに伝えたい事などはありますか。

RB: 日本の味覚テイスティング能力、そしてシャンパーニュの状態に非常に感動しています。たとえば提供する温度やテイスティングに使用するグラスなど、ほんとに些細なことですがすばらしい。ランスより日本のほうがこのようなシャンパーニュを味わうことに対しての感覚が優れているのでしょう。このような繊細な気持ちがあるので日本の方は試飲したときに繊細な味覚を感じ取れるのではないかと思います。

ありがとうございます。本日はお忙しいところありがとうございました。

シャンパーニュ造りに対して非常に熱心に、そして熱く語ってくれたラファエル氏。シャンパーニュを愛し、研究熱心な氏。それは自ら生産したシャンパーニュだけではなく、他の造り手のシャンパーニュ、あるいは他国のスパークリングワインなども数多く飲んでいることからも想像できます。彼の言葉で印象的だったのが「自分の造るシャンパーニュは絶対ではないが、色々なシャンパーニュを飲まずして、自分または他のシャンパーニュを批評するのは良くない。他の造り手のシャンパーニュをいろいろ飲んで、そして最終的に自分のシャンパーニュを飲んだときにどう感じるか。そこで初めて自分のものが他のシャンパーニュと比べてどうなのかが判断できる」と。

今回インタビュー中にBrut ReserveとRefret d'Antan 2種類のキュベをいただきましたが、製法は違えど随所に同じフィネスを感じることができました。シャンパーニュの次世代を担う若手として今後の動向にも期待が高まります。

Lineup

Brut Reserve

ブリュット・レゼルヴ

もっともベースになるシャンパーニュでベレッシュの入門編で他のラインアップに比べ9.5g/Lとドサージュの量が多いリザーブワインを30%ブレンドしPN20%、PM25%、CH25%マロラクティック発酵を行わず、24〜36ヶ月瓶熟成。きれいな酸が残っている、アフターに残る苦味が更にフレッシュ感をもちあげている。

Extra Brut Reserve

エクストラ・ブリュット・レゼルヴ

PN20%、PM25%、CH25%。現在発売のものは2003年をベースに1999年〜2001年のリザーブワインを30%ブレンドし36ヶ月熟成黒ぶどう主体だか重さがなく透明感のある味わい。

Les Beaux Regards Chardonnay

レ・ボー ルガール・シャルドネ

Ludes村の特に石灰質が強い南東向きの区画「ボー・ルーガル」1902年に植えられたぶどうを代々大時に守り抜いており平均樹齢は50年。現在発売のものは2004年単独年でのアッサンブラージュされておりリュード80%、マルイユ・ル・ポール20%。ドサージュ5g/Lで36ヶ月熟成。

Cuvee du Centenaire Millesime 2000

キュヴェ・デュ・サントネール・ミレジメ 2000

1990年、1996年に続くヴィンテージPN40%、CH40%、PM20%。ドサージュ6g/Lで2000年はわずか4000本の生産量。

Refret d'Antan

ルフレ・ダンタン

2600本限定リリースされた古き良き時代の造りを再現したスペシャル・キュベ。リザーブワインにはソレラシステムが使われています。100%天然酵母による発酵。熟成期間に王冠ではなくコルクによる熟成(1950年以前はこの方法が主流)。ノン・フィルター、ノン・コラージュ。ドサージュ量は7〜9g/L。

sH

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