こちらのボランジェ社のスペシャル・キュヴェも。3つのぶどう品種を使うだけではなく、ピノ・ノワールをさまざまな畑から収穫しブレンド。長い熟成期間とあわせて、奥深い素晴らしい複雑味を生む。
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さて、前段で「土壌で大きな違いがない」と紹介しました。単純にブルゴーニュなどと比較して、それではあまり複雑さもなく、面白くないのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ところがこれこそが、もうひとつのシャンパーニュという土地の魅力なのです。なにが魅力なのか。それが、大きな違いがない中で、土壌の微細な変化を利用した世界最高峰の「ブレンド技術」なのです。
ここでいうブレンドは、いわゆる「アッサンブラージュ」のことではありません。シャルドネXX%、ピノ・ノワールXX%、ピノ・ムニエXX%、合計100%という、ぶどう品種を組み合わせたものではなく、同じシャルドネのXX%をアヴィズ村から、XX%をオジェ村から。ピノ・ノワールのXX%をブジー村から、XX%をマイイ・シャンパーニュ村から。そのように収穫し、メゾン独自の考え方でブレンドすること。それが他の地域にないシャンパーニュの面白さなのです。例えば、あるメゾンのシャンパーニュは、アイ村とブジー村のふくよかで力強いピノ・ノワールとヴェルズネイの凛としたミネラリーなピノ・ノワールが融合されていというような、微細で微妙、しかしそこからくっきりと鮮やかにメゾンのキャラクターが浮かび上がってくる面白さがあるわけです。
これが、シャンパーニュという地域そのものを味わう、というシャンパーニュの楽しさともいえます。土地の持ち味が近いからこそ、ブレンドで多彩なキャラクターを生み出せる。「北限でよいぶどうが取れないからブレンド技術が発達した」、そんな説もありますが、むしろ、素晴らしい世界をクリエイトするためにブレンド技術が発達した、と考えたほうが良いでしょう。同じパレット、同じキャンバス、同じ筆を使い、課題は一緒。それでも絵の具の微妙な混ぜ具合や筆の運び、そして頭に描いた世界観で、描かれた絵が違ってくる。そんなアートを思わせるのが、グラン・メゾンのシャンパーニュといえるのではないでしょうか。 |
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