シュワリスタ・メンバーの私的な、しかし、広く紹介したい09年ベスト・シャンパーニュを、それぞれの視点でセレクトしました。贈り物だったら…、ごちそうになりたいとすれば…、希少なマニアックアイテムとすれば…、今年お店で評判だったのは…、そしてプラークはこれ!というディープなものまで。09年を彩ったシャンパーニュへ、こんな角度からも祝福します。
誤植ではなく、「1825年」、文政8年のペリエ・ジュエだ。現存する世界最古のシャンパーニュとして、ギネス・ブックに載っているのがこれ。ペリエ・ジュエから、何かの間違いで私宛に「エペルネの本社で、2002年から1825年までのシャンパーニュを20ヴィンテージ分、試飲するんですが、来ませんか?」と招待状が届いた。こんな幸運は1,000年に1回だけだ。もちろん、あらゆる言い訳を駆使して、全部の予定をキャンセルし、エペルネに飛んだ。 試飲したのは、2009年3月5日だった。メンバーは、世界で一番有名な女流ワイン評論家、セレナ・サトクリフ女史、フランスのワイン評論家、ミシェル・ベタンヌ氏、邦訳の『シャンパン&スパークリングワイン事典』の著者、トム・スティーヴンソン氏、シャンパーニュを4,000本飲んで点数をつけたマニア必読の書、『4000 Champagnes』の著者、リシャール・ユリン氏など、世界の著名ワイン・ジャーナリストばかり12人。オチャラケ・ワインライターの私としては、イチローや松井秀喜を目の前にしたリトルリーグの三振王の気分だった。 |
2002年から1964年まではベル・エポックで(ベル・エポックの初ヴィンテージは1964年)、それ以前のものはヴィンテージ・シャンパーニュだった(もちろん、全部蔵出し)。すべてがマグナム・ボトル。最古の1825年は、コルクを革紐で留めてあった。184年前のシャンパーニュなので、もちろん、泡はないが、泡のあった痕跡はしっかり舌で感じる。「忠臣蔵」で、吉良邸に討ち入った大石内蔵助が、吉良上野介が逃げたあとの布団に触り、「まだ、温かい。遠くへは行っておらぬ」と言ったののシャンパーニュ版だ。 グラスからシェリーの香りが立ち上り、キレいに熟成したことがよく分かる。口に含むと、液体のフルーツ・コンポートを飲んでいる気分。こうなると、美味い・不味いという次元を越えて、歴史を飲んでいる気がした。大恋愛の末、お互いの両親に引き裂かれて生き別れになった男女が50年後に再会すると、男女の愛ではなく人類愛を感じるはず。そんなシャンパーニュだった。 この試飲会以降、ペリエ・ジュエの悪口は(しばらく)書かないと心に誓った。 |
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瀬尾麻美(せお あさみ) |
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Vol.38
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