2010、それはもしかしたらシャンパーニュにとってはとても幸せな年だったのかもしれません。一時期元気を失っていた世の中に、幸せを運んでくれた泡たちに感謝をこめて…2010年らしいトピックスを持った、シュワリスタ流ベストシャンパーニュ5本を表彰します。
シュワリスタ・ラウンジ9月特集でも紹介 した、軽やかな1本。実は…ということで裏話。撮影の日、どの順番でシャンパーニュを開けるか? という際に「やはり軽やかということでは、ニコラ・フィアットかつブラン・ド・ブランという組み合わせは最適だろう、しかも値段も張らない」…ということで最初の乾杯の1杯という設定にしました。しかし、スタッフ、参加してくれたモデルなど一同愕然。フレッシュ、優しい、でもなんだろう、このブラン・ド・ブランの豊かさは!?(しかもやっぱりリーズナブル)。そう、2002は間違いなくグレート・ヴィンテージ。グランダネ、ドン ペリニヨン、モエ・エ・シャンドン グラン・ヴィンテージ…など大手メゾンこぞって02は晴れ舞台。これからも続々と「02」はメゾンのプライドをかけて登場してくるでしょう。おそらく2000年からの10年ディケードの中でも02は最高の年のひとつ。その中で軽やかに、お値打ちプライスで、その神髄を堪能できるこちらは、やはり賞賛に値します。これからシャンパーニュの扉を開きたい、そんな女子会にも是非。
「世界一高価で華やかな野イチゴ」。。02というグレート・ヴィンテージを大いに感じさせながら、むしろこのロゼが教えてくれるのは普遍的なシャンパーニュの魅力。それは「恋に落ちるのは簡単。シャンパーニュがあればいい」ということ。女性から絶大な支持を集めるベル・エポック。最高醸造責任者のエルヴェ・デシャン氏に「では男性が楽しむとすれば?」と聞くと帰ってきた答えは、粋。「ベル・エポックを女性にサーヴしてください。女性は幸せな微笑みに満ちるでしょう。その微笑みを眺めるのが最高の楽しみ方でしょう」。その微笑みは、ベル・エポックの可憐であり高貴でたおやかな微笑み。しかし、このロゼはそこに、ある意味凶悪ともいえる本能を熱くさせる「なにか」があります。媚薬というにはあまりにも可憐。野生というにはあまりにも繊細。男と女の間に魔法の時間を生むシャンパーニュの代表格として表彰を。
シャンパーニュ業界のいろいろについて、愛好家が知らないことはたくさんあるし、むしろ知りたくもないこともいろいろある。いろいろな問題があって、でも、そこから私たち愛好家には新しい幸せがもたらされることもある。日本では2010年から本格的な展開が始まったポール・ベルトローも、もしかしたらそんな恩恵のひとつなのかもしれません。12月に行われたシュワナイト2010にオン・リスト。すると会場のあちらこちらから驚きの声。ディープ・シュワリスタをして「これどこ? なにこのおいしさ」「今まで本格的に流通していなかった? うそでしょ? 王道じゃない! 」という声が続々。そう、酸味と風味とドサージュのバランス、まさかの王道シャンパーニュがまだ隠れていたという喜び。まだまだシャンパーニュ地方には発見がある。そう思わせてくれた「新星」はすでにディジーで5代の歴史を歩む老舗です。
なんという凛とした、それでいて体に染み渡る感覚。これぞブリュット・ナチュールの世界。2010年11月、伊勢丹新宿店で開催されたシャンパーニュの祭典「ノエル・ア・ラ・モード」に来場したナタリーさんの自身の言葉によればその理由は至ってシンプル。「だって、せっかくいいブドウなんですもの。そのままの姿でテロワールを表現したかったんです」。ワイン分析のラボを経営し、2000年に実家であるこのメゾンを引き継ぐまでに、75というRMのコンサルティングを請け負ってきた実は凄腕、かつ学究肌でもあるナタリーさんが、わが故郷のブドウの素晴らしさ、シャンパーニュの息吹を表現した作品。コート・ド・ラバール地区、森に囲まれたルーブル・レ・ヴィーニュ村という我々からすれば神秘の場所の小さな畑から、新たな喜びが登場しました。
「さすがドン・ペリ」。この一言に尽きるかもしれません。シャンパーニュ地方というテロワールの表現もシャンパーニュの高い精神性、誇りだとすれば、世界中、どこにいても、モードと文化と華やかさの中でマジックを生んでくれるのもシャンパーニュの魅力であり、ひとつの精神性。この時代、2010年にアンディ・ウォーホルとのコラボを選んだ理由は、単に「感覚が生んだ偶然」なのかもしれません。しかし、お互いにとっては必然だったのでしょう。ウォーホル自身がニューヨークの夜にドン ペリニヨンを愛飲していたというエピソードがありますが、アートに革命を起こし、ミュージック、サブカルチャーとの融合で一般に広またことでアートというジャンルを守ったウォーホルと、同様にシャンパーニュという存在を常に世の中に強烈にぶつけることで、逆にシャンパーニュという世界を広げてきたドン ペリニヨンブランドの取り組みはある意味同じムーヴメント。02というそのまま出したっていい存在でも、ドン・ペリはここまでやる。これもドン・ペリの凄み。
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シュワリスタが選ぶ シュワリスタ・アワード2009 09年のシーンを飾った珠玉のシャンパーニュたち (09.12.25)