|
||||||||||||||||||||
月曜日の21時だというのに、その無国籍風のカフェレストランは意外なほどにぎわっていた。店に入ると、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『パラレル・ユニヴァース』が響く。99年に発表されたアルバム『カリフォルニケーション』に収録された、彼らの立志伝中時代のロックナンバーで、個人的にも彼ら史上の中で好きな一曲だ。ランスで聞くUSオルタナティヴロック。しかし違和感を覚えることもなく、深々と広がるレストランの奥に足を進める。中華風スパイスの香り、イタリアンを思わせるグリルの香り、そしてテーブルからはシャンパーニュと赤ワインの香り。それらが一歩進むごとに空腹を増幅させる。 ランスの無国籍的フレンチにてヴィアネイ・ファーブル氏を囲む、筆者、そしてシュワリスタメンバーたち。80's、90'sのチャート系音楽が心地よく響く空間で、ボランジェ スペシャル・キュヴェも進む。この時点で2本目が空いている。 彼はここランスに住み、車で30分かけてアイ村にあるボランジェ社に通っている。素朴で、5、6軒ほどのレストラン、しかも日曜日にほとんどの店が休むというアイ村と比べて、ランスは大都会だ。そして、よく磨かれたモダンな革靴、シャープで軽快なピンストライプのスーツを着こなす彼の姿もやはり都会的だ。 上: アイ村に堂々と、しかし凛として佇むボランジェ・メゾン。階段下に見える門をあけるとそこはボランジェの歴史が詰まった地下カーヴへ。この地下カーヴは迷路のようにアイ村の地下に張り巡らされている。 スペシャル・キュヴェは3本目があき、食事はデザートへ。考えてみればこの3時間前、僕らはアイ村のボランジェ社を訪ね、畑、カーヴの見学を通じて、ボランジェの世界観に触れていた。そして長い長いカーヴを抜けた先、ゲストルームでスペシャル・キュヴェ、プレスティージュであるラ・グランダネ99、ラ・グランダネ・ロゼ99、そしてRD96と大盤振る舞いすぎるテイスティングをしていた。テイスティングというと高尚だが、ヴィアネイの情熱的な話にのめりこむうちに、ボトルはすべてすっかりあいてしまった。いずれも素晴らしい。その上で思う。定番であるスペシャル・キュヴェこそ、ボランジェの哲学を体現する存在であるとともに、いつまでも飽きの来ない愛すべき存在であることを。ヴィアネイが僕らにスペシャル・キュヴェを勧めるのは単に営業的なことではない。なぜなら、僕らの中で彼が一番いいペースでスペシャル・キュヴェをあけ続けているのだから。彼の日常の幸せな時間のそばには、スペシャル・キュヴェがあった。 カーヴ見学のあと、ゲストハウスにてスペシャルテイスティング。ボランジェの素晴らしいラインアップ。 話題は尽きない。 この日2軒目は、ホテルのラウンジで。フレンチ・デザインのポップセンスが光る店内デザインやディスプレイ。ランスを拠点とするシャンパンメゾンの銘柄がズラリ。プライスは地元だけあって店の雰囲気を考えればリーズナブル。 このとき、僕らは決意した。
ボランジェ スペシャル・キュヴェと過ごしたランスの夜。この素晴らしい幸せをトーキョーで再現しよう。どんなケミストリーが生まれるのか? 逆にどんな共通点がみつかるのか。 0時を回っても、スペシャル・キュヴェのマジックは続く…いや加速する。英語、フランス語、日本語がまざりところどころ意味不明な会話もあるけれど、それもまた心地よいBGM。 |