オーベルジュの心意気
09.9.23 up
今回のオーベルジュ特集いかがだったでしょうか?
シルバーウィークにお出かけになったかたもいらっしゃるかもしれませんね。
さて、今回の取材で僕がオーベルジュが好きだという理由が、はっきりしたのかと、
そんな思いがありました。
まずシェフ・ソムリエ、藤江さんの一言。
「僕らは『山のソムリエ』なんです」
そして、勝又シェフの
「オーベルジュの料理は、机の上で生まれる料理ではないんです」
ホテルのレストランとも、町場のファインダイニングとも、そして愛しいビストロや居酒屋ともまた違う魅力。なるほど、な。
つまりは、その土地の自然と文化と一体になり、
それが創作であり、サービスと一体であるということ。
特集取材で同行した、プロデューサー中川氏もシュワトークで書いているとおり
※中川氏の素敵な写真もシュワトークに掲載していますので合わせてごらんください。
まだ、日本でのオーベルジュの認知度は低く、
単に変わったウェディングスペース、ペンションみたいなもの?
という間違った印象なのかもしれません。
しかし、旅の楽しさと美食の嬉しさの最上級の融合がオーベルジュであること。
そして、日本各地に、フランスやドイツ同様の素晴らしいオーベルジュることを知っていただきたい、というのは、僕の思いでもあります。
「日本でのオーベルジュまだまだこれからだとは思いますが、全国にがんばっている人たちがいる。素晴らしいロケーション、若い料理人さん…いろいろな個性で、いいオーベルジュがたくさんあるんです。ぜひ、いろいろみなさんに楽しんでいただきたいですね」(勝又シェフ)。
考えてみれば、日本人は旅館でその土地のものを味わう楽しみをしっています。
旅番組で、どこかの港町の市場の食堂なんかをみると、いきたくなってしまう、なんていう旅と食を一緒に味わう楽しみをちゃんと持っています。
今までは、そこにシャンパーニュやワインを組み合わせて、そして、ダラッとし過ぎない心地よいリラックスした緊張感のある、そんないい雰囲気を堪能できる場所は、あまりありませんでした。それが、今、日本の各地にたくさんあるのです。オーベルジュという場所で。
たとえばオー・ミラドーさんでは三島の野菜を、地元の方々と一緒になって作りあげ、
ほとんどの食材を地元で調達し、その魅力を存分に味わってもらう。
「三島の青い野菜をたっぷりつかいました」
「こちらは三島の赤い野菜のスープです」
ここにくるまで、三島の野菜というものに出会えるチャンスなどはなかったし、そもそも、三島の野菜と聞いてそれをチョイスするかといわれれば、おそらくしないでしょう。
それが、この地に来ることで、三島の野菜が素晴らしいものだという発見ができる。
正直にいえば、僕自身、ある程度ブランドとして確立した産地の野菜を選んでしまう。
それがここに来れば、出会える。
軽井沢で浅間山麓の高原野菜、信州で八ヶ岳のジビエ、北海道で地元で消費されてしまう地元酪農家のチーズを、シャンパーニュとワインで。
テロワールと出会えるだけでなく、そこで一生懸命頑張っている農業、畜産、酪農、漁業、醸造家たちとも、その食材、料理を通して出会える。それを伝えるのがオーベルジュのシェフであり、ソムリエであり、サービススタッフなのではないでしょうか。
北海道・十勝のオーベルジュで地元のチーズ、ブランデーと出会った夜、同じく北海道のオーベルジュで、シェフが育て、朝抜いたばかりの野菜たちの力強い芳醇、それもテロワールのアンカーとしてのオーベルジュスタッフの力。
そうだ、その土地の自然と文化はもちろん「心意気」を味わうこと。素敵なお酒と背筋を力を抜いて伸ばせる雰囲気の中で。
これが僕流の、オーベルジュの楽しみ、なんでしょうね。