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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.10
08.6.12 up

『ジョノ・ロバン』当主インタビュー

text: 前田行紀 photo: 編集部 五十嵐豊
取材協力: オエノングループ 山信商事(株)

sH エクスクルーシヴ インタビュー

コート・デ・ブラン地区の南に位置する村、タリュ・サンプリで1964年から家族経営でシャンパーニュを造り続けているジョノ・ロバン。当主シリル・ジョノ氏(以下CJ)が来日され、sHwAlistaの単独インタビューに時間を割いていただきました。

【ジョノ・ロバン概略】
1964年に設立された家族4人で経営するメゾンです。5.5ha(4.5ha=タリュ・サンプリ、1ha=モンティエ)のブドウ畑を有しており、生産本数は年間わずか5万本。主要品種はピノ・ムニエで、作付け比率はPM=68%,PN=22%,CH=10%で樹齢40年以上の古木が80%を占めています。除草剤、殺虫剤を使用しない有機栽培の理念に基づいた栽培方法を実践しています。

こんにちは、お会いできて光栄です。本日はジョノ・ロバンとしてのシャンパーニュ造りへの拘りや、地域の情報などをお伺いできればと思いますので、よろしくお願いします。早速ですがメゾンの設立が1964年ということで、比較的新しいシャンパーニュの造り手だと思いますが、以前はシャンパーニュ造りをされていなかったでしょうか。加えてシャンパーニュを生産するようになった経緯を簡単に教えてください。

CJ: 私達の家族は1964年以前全くシャンパーニュ造りに携わってはいませんでした。1964年に私の父がシャンパーニュ造りを始めたのです。祖父の所有する土地に元々ブドウが栽培されていました。しかし祖父も職業はワインとは全く関係のないものでした。シャンパーニュを造り始めたきっかけはシャンパーニュの需要です。1960年代はフランス国内でもシャンパーニュの需要が増え、小さなメゾンが大きく拡大することが顕著だった時期なのです。そのため今までシャンパーニュ造りに取り組んでいなかったメゾンの参入が増えた時期でもあります。ですからこの時期に始めたのは、特別珍しいことではありません。

今までシャンパーニュ造りに携わっていなかったのであれば醸造法の習得や設備などは苦労があったと思いますが、醸造学校に通うなど、何か特別なことはされたのでしょうか。

CJ: アヴィズ村に専門の学校があり、父がその学校でブドウの栽培法や醸造法を学びました。シャンパーニュを造り始めた頃は協同組合にブドウを納入して、そこで一緒にシャンパーニュを造りながら学びました。その後しばらくしてから自分自身で造るようになったのです。

そうですか、やはり一からメゾンを起こすには多くの苦労が必要なのですね。さてタリュ・サンプリという村は私も初めて聞いたのですが、村の特長を教えていただけますか。

CJ: タリュ・サンプリはコート・ド・セザンヌ(現在は一般的に4地区で表され、コート・デ・ブラン地区にあたる)地区にあります。パリからエペルネまで電車で1時間30分ほど揺られて、エペルネからタリュ・サンプリは公共交通機関がないので車で30分ほど走ります。シャンパーニュ地方の中でも南に位置している私の村は100人程度の小さくてとても静かな村で、人々のほとんどがワイン造りに携わっています。ワインを造っている人以外はほとんどいませんが、都会の喧騒を避けて週末のみ村に住居を構えている方もいます。観光用の施設やレストランなどは村の中にはありません。

私達の村ではピノ・ムニエをメインに作付けされていますが、これには理由があります。タリュ・サンプリの村には中央に川が流れていますので、この川から春先に霜が上がってきます。霜はブドウの大敵ですので、霜の時期を外して植生が始まるピノ・ムニエを栽培しています。これは他地域においても同様で川に沿ってピノ・ムニエが植えられる事が多いのです。

のどかな村だということが良く分かりました(笑)。それではジョノ・ロバンの畑の特長については、どのようなことが挙げられるでしょうか。

CJ: 私達の所有する畑は40年以上の古木が多くあります。若い木と古木の違いは若い木からは多くのブドウを収穫できますが、古木は徐々に収穫量が減ってきます。しかし古木は根が地中深く張っているため、若い木に比べてテロワールを感じやすく、なおかつ房の数が少ないのでより凝縮感が増します。しかしだからといって古木が良いというわけではなく、シャンパーニュ造りには若い木も古木も両方必要だと考えています。

ブドウに関しては良い土壌を作るよう心がけています。たとえば畝にわざと草を植えてブドウの根をより成長させたり。ぶどうの木は剪定をして不必要なものは取り除きます。

そしてこれはこの後フランスへ帰ったら始める作業なのですが、木々の枝をまっすぐ上に向けるようにして風通りをよくすることです。枝と枝の風通しが悪いとブドウが病気にかかりやすくなりますので、これはとても重要な作業です。5万本の木があり、一株が20〜30の枝を持っているので非常に大変な作業ではあります・・・。しかしこれを怠ると相当量の化学肥料が必要になります。私達は必要な時に極少量使用しますが、基本的には化学肥料を使用しません。

化学肥料を使わない自然に近い農法を実践する事は非常に労力が伴うのですね。それでは最後に日本のシャンパーニュファンに一言お願いします。

CJ: 日本では特にお祝い事のときに良くシャンパーニュを飲まれるときいています。それはフランス国内も同じことなのですが、夏は冬に比べてシャンパーニュを飲む機会が少ないと思いますが、私の提案は、ぜひ夏にロゼ・シャンパーニュを飲んでください。ロゼは暑い夏でも清々しい気分にしてくれるシャンパーニュです。

シリル・ジョノ氏は日本で初めてのインタビューということで若干緊張されていたようですが、途中冗談も交えながらシャンパーニュ造りについて語っていただきました。2000年を境に自然派のシャンパーニュ・メゾンが増えてきましたが、その造り手だれもが真摯にブドウ造りに取り組んでいることが印象的でしたが、シリル・ジョノ氏もやはり、真剣に取り組んでいる印象を受けました。最上級プレスティージュキュヴェのレ・グラン・ノも非常に贅沢な造り方をしており、ブドウの質だけではなく、醸造に関する拘りも見受けられました。

Lineup

Brut Carte Noir

ブリュット・カルト・ノワール

ピノ・ムニエ70%、ピノ・ノワール30% 全てステンレスタンクで醸造、瓶詰して2年半〜3年寝かせてから出荷。5つのキュヴェではもっともフルーティーなニュアンスが感じられ、熟成期間が短くフレッシュ感を残しています。アペリティフ、魚介類、ホタテ貝やレモンのソースなどとの相性が良さそう。

Brut Selection

ブリュット・セレクション

ピノ・ムニエ60%、ピノ・ノワール30%、シャルドネ10% タリュ・サンプリで生産されているブドウの比率とほぼ同じブレンド。そのためタリュ・サンプリのテロワールを最も良く表しています。3年半ほどの熟成期間の後にリリースされ、カルト・ノワールに比べフレッシュさは陰を潜めますが、代わりに熟成感が表れています。アペリティフにも食中酒にも向きます。白身の肉や、ラタトウイユにペッパーを利かせた料理などにも良いでしょう。

Brut Prestige

ブリュット・プレスティージュ

シャルドネ80%、ピノ・ノワール20%を使用。ジョノ氏の造るシャンパーニュでもっともシャルドネ比率の高いキュヴェでコート・デ・ブランらしいシャルドネの風格を備えつつタリュ・サンプリの特徴であるスパイス香も感じることができます。3年半〜4年の間熟成をしてから出荷。「日本料理では天ぷらととても合うと思う」とはジョノ氏談。

Les Grands Nots

レ・グランド・ノ

3種類のぶどう品種が同比率でアッサンブラージュされたジョノ・ロバン最高キュヴェ。樽発酵、樽熟成、無濾過、ドサージュを一切行わないこのキュヴェは、一般的には4000kgから2550リットル絞られるブドウジュースのうち最初の300リットルだけを使用する、キュヴェの中のキュヴェ。ドライでありながら果実味や熟成感も同居しています。表記上はNVだが、現在リリースされているものは2002年に収穫されたヴィンテージ。

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