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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.13
08.11.20 up

『アルフレッド・グラシアン』
生産者インタビュー

text: 前田行紀 photo: 編集部 藤原光昭
取材協力: 中島董商店 ワイン事業部

sH エクスクルーシヴ インタビュー

全てのワインを樽熟成、樽発酵させる昔ながらの製法を貫く、シャンパーニュの作り手アフルレッド・グラシアン。そのマーケティングディレクターOlivier Dupre(オリヴィエ・デュプレ)氏(以下OD)がPRの為に来日。貴重なお時間をシュワリスタ・ラウンジのインタビューに割いていただきました。

【アルフレッド・グラシアン概要】 1864年23歳のアルフレッド・グラシアンがエペルネにメゾンを設立しました。同年ロワール地方のソミュールにもスパークリングワインの醸造所を設立しています。10年後アルベール・ジャン・メイエという新しいビジネスパートナーを見出し、「グラシアン・メイエ」に社名を変更しました。その後アルベール・ジャン・メイエの子孫は、創業者であるアルフレッド・ グラシアンのシャンパーニュつくりに対する哲学を引き継ぎ、この2つの醸造所を守っています

はじめまして、私自身アルフレッド・グラシアンに対する印象といえば木樽発酵やノン・マロラクティックなどのイメージを持っているのですが、改めてお伺いしたいと思います。アルフレッド・グラシアンのシャンパーニュの特徴とは何でしょうか。

OD: 私たち、アルフレッド・グラシアンはNMといっても小さなメゾンでシャンパーニュ生産量のわずか0.1%のシェアしかありません。その小さな私達のメゾンが生き残っていく為には他と違う事をしなければなりません。そのなかで私たちは3つの特徴があります。

ひとつはいいワインを造るためにはいいブドウを確保しなければならないということです。 そのために私たちは尽力しています。具体的には自社畑を 1.7haしか持っていません。その為大半を生産農家から購入するのですが、現在約60のブドウ栽培家と非常に強い関係を結んでいます。

OD: 栽培家との信頼関係を私たちは非常に重要視しています。ブドウ栽培家と強い関係をどのようにしてもつかということは、私たちがどのようにしてシャンパーニュを造っているかを見てもらう、もしくはそれらを明確に示す事によって生まれると考えています。一つの例を挙げると私達は100%スティルワインを樽発酵、樽熟成していますが、すべての樽に村名と栽培家の名前を記名して発酵・熟成します。つまり全ての栽培家は別々の樽で発酵熟成されます。これを2年に一度すべての栽培家を本社に招き試飲していただく機会を設けて、それぞれのワインに対するディスカッションをおこなっています。

もうひとつの特徴はブドウがワインに変わる工程でのことです。私たちはすべてのスティルワインを樽発酵・樽熟成しているということは先ほど述べましたが、ここで重要なことがあります。私たちは新樽を一切使っていないということです。樽は4回以上使われシャブリ・ジェンヌから購入しており樽は平均12年、最大で20年間使用します。なぜ古樽を使うかというと、新樽では樽の香りが強すぎて本来の味を壊してしまいます。私たちが樽を使う目的は樽の風味をワインにつけることではなく、マイクロ・オキシジネーションにより柔らかで、酸化に対して強いワインを造ることにあるからです。

OD: 樽を使用している生産者は最近増えていますが、全てのワインを樽発酵・樽熟成しているメゾンは私たちとKrugくらいしか知りません。それだけではなく私たちのシャンパーニュはマロラクティック発酵を行いません。現在95%の生産者はマロラクティック発酵を行っていますが、私たちはフレッシュ感を失わないため、また長熟に耐えるためこの過程を行っていません。

最後にもうひとつの特徴は、1905年以降セラーマスターをジェジェ家が代々勤めていることです。現在はニコラ・ジェジェ氏が4代目のセラーマスターとして、3代目のジャン・ピエール氏と共に活躍しています。ジェジェ家は100年以上アルフレッド・グラシアンの伝統を守っています。

セラーマスターにはブドウ栽培家とのコネクションを気づくことも仕事のひとつでジャン・ピエール氏は60の生産者と毎年必ず一度は食事の機会をもって栽培家との信頼関係をより強固なものとしています。セラーマスターが代々同じ家の出身者ということは他のメゾンにはない特徴だと思っています。

シュワリスタ・ラウンジの読者にはシャンパーニュ地方を訪れる方も多いので、エペルネの観光について教えていただければとお思います。たとえばシャンパーニュを飲みたい時にはなんというお店を訪問すればよいのでしょうか。

OD: エペルネにショッピング目的で行くのなら、それはあきらめた方がいい。しかしシャンパーニュを目的で来るのなら、それは最高な場所です。小さい町で本当になにも無いところですが(笑)。安くてRMをたくさん置いてあるLe 7という名前のお店がお勧めです。そのほかにはRueFlodoardにあるワインショップも品揃えが豊富です。

ありがとうございます。ひとつ私自身が気になっていた事を伺いたいのですが、アルフレッド・グラシアンのプレスティージュ、『パラディ』の名前の由来を教えてください、もうひとつプレスティージュクラスのシャンパーニュでは珍しくヴィンテージの記載がありませんが、これはなぜでしょう。

OD:  パラディの名前のストーリーですが…、プレスティージュシャンパーニュを開けるときは、日常そう頻繁にある事ではなく、特別な時にしかあけませんよね。例えば友達のお祝い、夫婦のお祝い、凄く素敵な女性が現れた時などはスペシャルなボトルをあけます。これはとてもパラダイスではないですか!?

もう一つの答えですが、これはとても簡単です。私が入った当時2000年ごろにはブリュット、ヴィンテージ、パラディ、パラディロゼの4種類しかラインアップはありませんでした。その当時にセラーマスターのジャン・ピエール氏はヴィンテージシャンパーニュ以外にはヴィンテージ表記を記載していませんでした。それをリスペクトして現在でもパラディにはヴィンテージを入れていません。しかし実際は単一ヴィンテージのブドウで造られています。

今話題に上ったパラディですがどのようにして作られているのでしょうか? 60もの造り手がいらっしゃるというお話でしたが、多くのブドウ栽培家のブドウから作られているのでしょうか。

OD: パラディはテイスティングをおこなって、良いワインのみをブレンドして造られています。やはりグラン・クリュのブドウが多くなる傾向にありますね。約10程度の栽培家のブドウから作られていますが、これは毎年一定ではなく。たとえばメニル・シュール・オジェの栽培家は3人いるのですが、それぞれが違った個性のブドウを造ります。そのため特定の栽培家のワインをパラディに毎年使うというわけではありません。

私達のシュワリスタラウンジは専門的な知識だけではなくスタイル提案をおこなっています。オリヴィエさん自身のシャンパーニュの楽しみ方を教えていただけますか。

OD: シャンパーニュはどんな時に飲むという決まりはありません。シャンパーニュはシャンパーニュなのです。いつ飲んでも構いません。ただ一ついえることは一人で飲まないで、気心知れた方と楽しんで飲んでほしい。頭が健全であると体が健全であるように、体が健全であると頭が健全となります、美味しいシャンパーニュを飲んで頭をすっきりさせて、体も健康になりましょう。

最後にシュワリスタ・ラウンジの読者は本当にシャンパーニュが好きな方が多いのですが、日本のシャンパーニュファンに一言お願いします。

OD: 私達は情熱を持ってシャンパーニュ造りをしていますし、私達はそういったシャンパーニュ好きの人たちの為にワインを造っていると思っています。私達は小さなシャンパーニュハウスですがTOP10に入るくらいの評価と品質をもっていると信じています。ボトルやエチケットのデザインについても、いい評価をいただいています。もちろん外観も必要だと思います。見た目も食の中で重要な位置を占めるようにシャンパーニュも購入前にボトルをみて、想像する。そのようなことも大事です。しかしやはり中身が一番大切です。つまりどのような個性のシャンパーニュがボトルに入っているか、そのクオリティがもっとも大切なのです。

私達は一番絞りであるキュヴェのみしか使いませんし、100年間以上の栽培農家との深いつながりがあります。有名なワインソサエティの会に長年ワインを提供し続けています。とにかく百分は一見にしかず。ぜひ一度味わってみてください。

オリヴィエ氏は非常に熱心に語っていたのはブドウ栽培家との関係でした。氏の言葉でもっとも印象深かったのは「シャンパーニュ地方へ来て今のブドウを価格より高く買うと生産農家に言っても、簡単にはぶどうを売ってくれないでしょう」と。今まで多くの生産者のお話を伺ってきていますが、自社でブドウ栽培から瓶詰めまで行っているRMはもちろんのことですが、栽培家からブドウ購入しているNMについてもブドウの品質へのこだわりは変わらぬものがあります。

昔ながらの樽を使ってワインの強さを出しつつも、非マロラクティックでフレッシュさも残しているアルフレッド・グラシアンの魅力はオリヴィエ氏が話すように百聞は一見にしかず、いや百聞は一飲にしかず。だと感じました。

※アルフレッド・グラシアンの一般の方の見学は出来ません。

オリヴィエ氏 おすすめのお店

Bistro le 7
住所: 15,rue des Berceaux 51200 Epernay Epernay,51200
番号: 03 26 55 28 84

シンプルなビストロを提供するお店

 
Lineup

Brut

ブリュット

CH45%、PM43%、PN12%で約30村のブドウをブレンド、ドサージュは10g/Lでヴァン・ド・レゼルヴは約15%をブレンド。NVながら36ヶ月以上の瓶内熟成をおこなっている。グリーンがかったイエローに細やかな気泡。白い花の香りやチョーク独特の香りを感じます。NVながら軽めの食事であれば通して楽しめる力強さを持っています。

Brut Rose

ブリュット・ロゼ

アッサンブラージュはBrutと同様で、Bouzy産の赤ワインを8〜14%アッサンブラージュしたもの。ドサージュやヴァン・ド・レゼルヴもBrut同様だが熟成期間はフレッシュを出すため瓶内熟成期間は24ヶ月とBrutに比べやや短い。サーモンピンクの外観にふくよかなベリー系の香りが特徴的、フレッシュ感が強いのでテラスなど屋外で飲みたいシャンパーニュです。

Brut Blanc de Blancs

ブリュット・ブラン・ド・ブラン

メニル・シュール・オジェ、アヴィズ、シュイィ、クラマン、オジェのグランクリュのシャルドネを100%使用したブラン・ド・ブラン。表記はされていないが単一ヴィンテージ(現行品は2004年)、ドサージュは9g〜10g/Lで36ヶ月の瓶内熟成期間をへてリリースされます。このメゾンでは最も少ない年間12000本の生産量。力強いチョーク土壌の香りやあんずの香りがあり、ミネラルと酸味のバランスがよく、ややクリーミーな味わいも感じられる。

Brut Millesime 98

ブリュット・ミレジメ98

CH60%、PN20%、PM20%を使用、年によりブレンドの比率は異なる。ドサージュの量は9g〜10g/Lで、8年〜9年と非常に長い期間熟成させる。長期の瓶内熟成も昔ながらのコルクで瓶熟をおこなっている。年間生産量は20000本。イエローゴールドの深みのある色調で力強く、かつ口に含むと複雑なストラクチャーを持っています。オリヴィエ氏曰く5年以上熟成させる場合はコルクで瓶熟させると驚くほど違いが出てくるのだとか。

Cuvee Paradis Brut

キュヴェ・パラディ・ブリュット

CH65%、PN18%、PM17%、アルフレッド・グラシアンの造るプレスティージュ・キュヴェのひとつ。表記はされていないですが、単一ヴィンテージのブドウを使用しています(現行品は2002年)ドサージュは9g〜10g/Lで瓶内熟成期間は5年。年間生産量は40000本。凝縮されたブドウの香りと、ポテンシャルの高さを感じます。

Cuvee Paradis Brut Rose

キュヴェ・パラディ・ブリュット・ロゼ

BrutとRoseの関係同様に、パラディにBouzy産のワインをアッサンブラージュこちらも表記はありませんが単一ヴィンテージのシャンパーニュ(現行2002年)。年間生産量は20000本。熟したフルーツや赤い花の香りに、ややミネラル香も感じられる。細かく溶け込んだ泡が印象的なロゼシャンパーニュ。

sH

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