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sH レポート
業界向けの試飲会やイヴェントの模様、インポーターやメゾンの話題などを、シュワリスタ視点でレポートします
Vol.28
12.11.30 up

『キャティア』
当主インタビュー

text: 岩瀬大二(sH編集長)、前田行紀  
photo: 工藤裕之(パーティスナップ 編集部)

sH エクスクルーシヴ インタビュー

【キャティア概要】
キャティアはランスとエペルネの間に広がるモンターニュ・ド・ランスの南部シニー・レ・ロゼ「Chigny les Rose」村に本拠地を置く、1973年よりこの地に畑を持つ家族経営のネゴシアン・マニピュランです。20haのプルミエ・クリュの自社畑を持ち、リュットレゾネの栽培方法でシャンパーニュを造っています。 そして最近では、セレブアイテムとして名を挙げたアルマン・ド・ブリニャックの展開、ユーロ2012年の公式スポンサード、エヴァンゲリオンとのコラボボトルなど何かと話題を振りまいているイメージも強い。伝統と話題の展開、その狙いや背景について、キャティアの当主であるジャン・ジャック・キャティア(JJC)氏、そして広報担当のフィリップ・ビアンヴニュ(PH)氏に伺いました。

まず、シャンパーニュ・キャティアの「変わらない哲学」についてお聞かせください。

JCC: 家族経営です。本格的に造り始めたのは私の祖父の時代。第一次世界大戦の前です。家族経営のシャンパーニュメゾンであることは、現在、シャンパーニュの中でも重要な存在です。もちろん、続けていくことは困難なことも多いものです。今回、息子も日本に来たがっていたのですが、来ることが叶わなかった。今、醸造が始まったところなので、忙しくて、残念がっていました。それも、すべてを家族でやっているので仕方がありませんね(笑)。
この家族経営を続けていくことが私たちの哲学でありますし、トラディショナルな部分をしっかり残しながら、新しいことをクリエイトしていくことも大切だと考えています。

PH: 新しいものをどんどんマーケットに投入していくことはキャティアにとって、とても大切なことです。ユニークであり、特殊であるものを市場に投入する。大手のメゾンとの真っ向勝負は難しいけれど、柔軟に挑戦、クリエイトしていけるのが我々の強みですね。もちろん、ただインパクトのあるものを市場に投入するだけではなく、シャンパーニュ自体もしっかりしたものを造り続けなければいけません。

その点で、キャティアのシャンパーニュの強みはなんだとお考えですか?

PH: 私たちの本拠地、モンターニュ・ド・ランス自体がベストなテロワールを誇っている場所だと思います。この地は黒ブドウで名を馳せています。円熟味、果実味がやわらかく丸みを帯びて口の中で伝わる。その中でキャティアはプルミエ・クリュを32ha所有していますが、これはかなり大きな規模です。

JCC: 私たちはこのモンターニュ・ド・ランスのブドウを非常に重要視しています。大手メゾンがシャンパーニュ全土からブドウを集めて品質を一定化させているのに対して、私たちはこのモンターニュ・ド・ランスの黒ブドウを生かして、この地のテロワールを表現するシャンパーニュつくりを心掛けています。そして黒ブドウだけではなく、ブラン・ド・ブランなら、シャルドネを南の方―例えばコート・デ・ブランーで買えばいいのかもしれないが、キャティアはモンターニュ・ド・ランスで育ったシャルドネを使う。そういうことなんです。

PH: そして私たちは「クロ」の名を持つ畑を持っています。クロは、現在、人工的に作ることは可能ですが、私たちが所有する、クロ・デュ・ムーランは、シャンパーニュでは数少ない昔からの畑です。この「クロ」から作られるシャンパーニュは非常に希少です。すべてが手作りで丁寧なつくり。エールフランスやブリティッシュ・エアウェイズのファーストクラスなどでも使用された実績がありますが、マーケティングのためではなく、私たちのシャンパーニュづくりの大切なものです。

家族経営で真摯にモンターニュ・ド・ランスのテロワールにこだわる。これはひとつのキャティアのプライドとすれば、もうひとつの取り組み。華やかな展開についてもお聞きしなければなりません。例えば、日本のアニメーションであるエヴァンゲリオンとコラボした限定ボトルがありますが、シャンパーニュとは縁遠いアニメとなぜ組むことになったのでしょう。

JCC: 実は最初この話が日本から持ち込まれた時は私も驚きました。シャンパーニュとアニメが一緒になるということが想像できませんでした。マンガとシャンパーニュの組み合わせなんてありえるのか?なぜなら、マンガやアニメはティーンエイジャーのためのものですよね?ところが調べてみるとそうではなくて、エヴァンゲリオンは子供が楽しんでいるものではなく、もう少し大人世代を対象としている。世界的にも、エヴァンゲリオン自体がスーパースター、セレブリティなんですね。事実、香港に滞在中、このボトルがきっかけでアニメ雑誌ではなくワイン雑誌の表紙を飾ることもできました。評判が広がってアメリカのお客様からも声がかかった。それならシャンパーニュのすそ野が広がるのではないかと考えたんです。まさに、キャティアのイノヴェーション・スピリットを刺激するものでした。わたし自身もお気に入りで、デスクにも飾っています(笑)。

キャティアのシャンパーニュに感じるやさしいテイスト。ピノ・ムニエのまろやかさやはかなさ。こうしたイメージからなかなかアグレッシヴなマーケティング展開が結びつかなかったんですが、常に革新を続けていきたい、というひとつのステートメントでもあるのですね。

JCC: トラディショナルなものをきちんと構築するのは当然。アグレッシヴに見えるかも知れませんが、私たちはそれぞれのキュヴェにこだわっている、その結果なんです。ノンドサージュならノンドサージュ(ブリュット・アプソリュ)、ブラン・ド・ノワールならブラン・ド・ノワール、それらにあわせた展開を考えると自然と多彩に見えるのでしょう。これからも新しいタイプのシャンパーニュを送り出すごとに、新しい展開をしていきます。キャティアは、オールウェイズ・パイオニア。そうあり続けたいと考えています。

この日は、恵比寿のフレンチレストラン『メゾン エメ・ヴィベール』にて、シャンパーニュ・キャティアならびにアルマン・ド・ブリニャックのプレゼーテンション・パーティが行われた。アルマン・ド・ブリニャックのブレット・ベリッシュ氏も来日し、華やかな雰囲気の中でラインアップを楽しんだ。

メゾン エメ・ヴィベール

http://www.aimeevibert.com/maison/restaurant/
東京都渋谷区広尾1-1-40 恵比寿プライムスクエア プラザ棟

現在シャンパーニュは、厳選された約30種類がオンリスト。「フランス料理だけではなくフランス本来の文化を表現したい」とマネジャーの高野氏が語るように、そのこだわりは、リストはもちろん管理方法にも表れており、温度帯別に計5つのワインセラーを完備し、シャンパーニュもブレスティージュとNVで温度帯を変えるなど徹底している。グラス提供のシャンパーニュは、その日の状況で変わるのでこれも楽しみの一つ。ボトルの他、ハーフボトルのリストも豊富。

キャティアのバラエティ豊かなラインアップはこちら

キャティアのトップシークレット?
シュワトーク取材こぼれ話
http://www.shwalista.jp/talk/detail.html?talkcode=943

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