クラヤミ食堂とダイアログ・イン・ザ・ダーク
10.5.8 up
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。外界を感知する為に必要とされる機能のひとつが完全に失われた時、人は何を思うのか?話題の「クラヤミ食堂」と「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」へ行ってきました。
クラヤミ食堂では、アイマスクをした状態でフレンチのフルコース(7品)を堪能。食は五感で楽しむ最たるものですが、視覚が失われることで、日ごろあまり意識の及ばない触覚や聴覚といった感覚がフルに活動を始めるのを感じます。一説によると、脳が情報を得る時には、その約80%を視覚から取り入れているそうで。これが本当なら、他の感覚器官を駆使して補わなければならない情報量は相当なものですよね。そうして得た感覚を、同じテーブルを囲む見知らぬ方々と共有しながら「このお料理は何かしら?」とワイワイおしゃべりしながら食べるのがとても楽しい。キャヴィアをいくらと仰っていた方もいらっしゃいましたが(笑)、偉そうに言っている私も味噌風味のグラティネをココナッツミルクと間違えたり(笑)
ダイアログ・イン・ザ・ダークでは、白杖と人の声を頼りに漆黒の闇の中を9人のグループで進んで行きます。ツアー・コンダクターは、視覚障害を持つ佐藤さん(通称:サトちゃん)。彼に導かれて扉の中に足を踏み入れて最初に感じたのは、むせかえるような緑の匂い。足に伝わってくるふかふかとした感覚は、きっと、落ち葉の絨毯。左手からは小川のせせらぎの音。嗅覚、触覚、聴覚と感覚がどんどん開かれていくことで、不安が楽しさに変わっていきます。トンネルを抜けたり、橋を渡ったりと、コースには難関も用意されているのですが、先を行く人が後ろに続く人に声をかけながら進んで行くことでチームワークが芽生えてゆく。終着地点のカフェも真っ暗。ここでは、ツアコンのサトちゃんが、手慣れた様子で皆に冷たいビールやワインをサーブしてくれました。目は見えなくても、頭の中ではちゃんと空間が見えているんですね。凄い。
二つのイベントに共通して感じたのは、ひとつの感覚が失われることによって別の感覚が開花する楽しさ、そして、見知らぬ者同士の助け合いから感じた人のぬくもり。同時に、通常の世界に戻った時、東京という街がいかに視覚的情報量が過多な街であるかということを再認識して、今の環境に浸かっていたらいつか大切な感覚を失ってしまうかも・・・と少し恐ろしくもなりました。
この感覚、シャンパーニュに関しても同じ事が言えるかもしれません。蘊蓄や銘柄やヴィンテージに捕らわれすぎてはいないだろうか?体感としての香りや味わいをおろそかにしていないだろうか?皆さんはいかがでしょうか。芸術品と謳われるシャンパーニュこそ、知識よりも体験、自由に感じることが大切なはず。機会があれば、皆で実験してみるのも面白いかもしれませんね☆