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前田エクストラ・ブリュット
シャンパーニュを取り巻く話題をちょっと? かなり? 辛口で切り取ります
前田行紀
シュワリスタ・ラウンジではシャンパーニュ・アーカイヴのデータ作成を担当。豊富な知識と旺盛な探究心で、「シャンパーニュの求道者」の異名を持つディープ・シュワリスタ。このコラムでは泡業界を愛と俯瞰、両面で斬っていく。
Vol.5
泡とレストラン
07.3.13 up
今年は暖冬。春の訪れも早くなりましたね。春と言えば桜。桜といえば、お花見。
お店でゆっくりとシャンパーニュを飲むのも良いですが、こんな季節は、たまには屋外で青空の下でシャンパーニュ…もいいものです。

さて、昨年あたりからシャンパーニュの飲めるお店が続々オープンしています。シュワリスタ・ラウンジ内でも何店舗か紹介をしていますが、ここ最近、飲食店でのシャンパーニュの普及率には目を見張るものがあります。

フレンチレストランでシャンパーニュが置いてあることは当たり前の話ですが、今までならまず置いていないような店舗やジャンル、例えば寿司屋、てんぷら、蕎麦、中華などのお店にもシャンパーニュが見かけられます。今までなら組み合わせることすらしなかった食材とシャンパーニュのマリアージュの機会に恵まれる。これはシャンパーニュ好きにとっては、歓迎すべき状況ではあります。

しかし、シャンパーニュがあって当然のフレンチレストランも含め、新たにシャンパーニュを追加したお店でも、残念なことに、必ずしも自らのお店が提供している食材や料理にあったシャンパーニュを選んでいるとは言い難い。

例えばシャンパンバーであれば、品数が大きくものを言います(こだわりのセレクトがあることは前提として)。しかしその他の飲食店となると、品数よりは、どちらかと言えば業態にあったシャンパーニュを提供したり、シェフの拘りが見えることが大事です。

例えば神戸にあった偉大なフレンチレストラン「ジャン・ムーラン」出身のシェフのお店。神戸に数店あるこれらのお店の何店かを訪ずれましたが、その全店舗でまったく異なるグラスシャンパーニュがサーヴされていました。同じお店出身の者同士であれば、以前から取引のある業者から同じものを仕入れてもまったく不思議ではありません。しかし彼らはそうしなかったのです。これには私も驚き、拘りを感じました。
ワインであれば、数多くのワインを試飲して、その中からソムリエのいちおしや、売れ筋を意識して仕入れをし、独自性を打ち出している店は多く存在します(恐らく名の通っているレストランの大半はそうでしょう)。しかしシャンパーニュではまだ少なく、ただ出入の業者が持っているものを置いただけという店が多いように思われます。それだけではなく、ワインであれば、この料理にはこのワインが合うと言ったような、お店独自のこだわりや、お勧めを持っているお店は多数存在するのですが、シャンパーニュはどうでしょう? シャンパーニュを売りにしている店舗でさえ、十分な知識を持たないスタッフや料理人を見かけます。これは一昔前のワインブームの頃を髣髴とさせますね。

客がお店に求めるものは、的確な味わいの表現と、好みの味覚から、自分にあった1本を選び出してくれることだと思うのです。お店側は正確な知識と、マリアージュなどのセンスなど最低限の事は身につけて、そのうえでサーヴィスするべきではないでしょうか。私はシャンパーニュとは知識で飲むものではなく、五感で飲むものだと考えていますが、このようなお店側の優れた知識やセンスがあって、はじめて、客側は知識で頭をいっぱいにすることなく、楽しめるのではないかと。

シュワリスタ的には、たとえ品数は少なくても、自分のお店の味を知って、料理や雰囲気に合ったシャンパーニュが提供されるお店が増えることを願っています。
SH

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