Home > 連載 > 前田エクストラ・ブリュット「シャンパーニュの生産地が拡大」
前田エクストラ・ブリュット
シャンパーニュを取り巻く話題をちょっと? かなり? 辛口で切り取ります
前田行紀
シュワリスタ・ラウンジではシャンパーニュ・アーカイヴのデータ作成を担当。豊富な知識と旺盛な探究心で、「シャンパーニュの求道者」の異名を持つディープ・シュワリスタ。このコラムでは泡業界を愛と俯瞰、両面で斬っていく。
Vol.15
シャンパーニュの生産地が拡大
08.4.24 up

お花見の時期も終わろうとしています。シュワリスタの皆様もお花見でシャンパーニュを楽しまれた方も多いのではないでしょうか。

さて、3月に入りプレスティージュ・シャンパーニュや新作キュベが続々とリリースされています。先月はポル・ロジェから新ヴィンテージのサー・ウインストン・チャーチル98が発表されましたし、またセレブリティご用達と言われているアンリ・ジローからも、新キュベ、コード・ノワールやフュ・ド・シェーヌ99の発表もありました。ペリエ・ジュエからは、なんと自分でドサージュができるベル・エポック2000のブラン・ド・ブラン12本セットが発表されました。お値段50000ユーロ…。

そんな華やかな話題が相次ぐ中、注目の情報がもたらされました。シャンパーニュの生産地域の拡大です。これは当コラムのVol.11で少し触れましたが、近年のシャンパーニュ需要の増加によって生産が追いつかず栽培者団体からの要望を受け見直しが検討されていました。そして、ついに2008年3月13日、AOCを管轄するINAOが、シャンパーニュの生産地域を拡大する提案を正式に承認しました。これにより38の村、そして約1000haが新たなシャンパーニュの生産地域として加わります。シャンパーニュの生産地の見直しは1927年以降、実に約80年ぶりとなります。

とはいえ、ブドウの植え付けをおこない新しく認定された畑で実際に増産されるのは、作付けを行い、ブドウの樹木が生育した後、収穫を行い、そして瓶内熟成を経てリリースされるので、まだまだ先の話。ということで、今すぐには新しい村名のシャンパーニュは出回らないことでしょう。

この生産地拡大はシャンパーニュ・ファンにとって大変朗報でありますが、一方、品質低下の危険性もはらんでいます。現在までは長年決められた地域のみでの生産でしたから、その土地にあった栽培方法や収穫時期がある程度確立されていました。一方新しく拡大された地域はブドウ栽培から試行錯誤から始まりますし、樹齢も若いため、古木に比べ十分な養分を蓄えることが難しく、味わいに奥行きの無いシャンパーニュになってしまいます。もちろんシャンパーニュはアッサンブラージュする飲み物ですので、ある程度品質をカバーすることは可能でしょう。しかし、それが出来るだけの十分な畑やリザーブワインを持っていない作り手などはどうするのでしょうか。複雑味や奥行きを持たせるために安易な形で樽を使用して、ブドウ本来の風味を殺すようなシャンパーニュが出てこないとも限りません。

しかしそう悲観的に考えても仕方ありません。新しい地域が増えることはブドウの選択の幅も広がりますし、その分、新しいアッサンブラージュも生まれるでしょう。これらを楽しみにして数年後に現れるであろう新地区のブドウで作られたシャンパーニュも楽しんでみましょう。

それでは今宵も良い泡を

SH

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