Home > 連載 > 前田エクストラ・ブリュット「悲劇のシャンパーニュ」
前田エクストラ・ブリュット
シャンパーニュを取り巻く話題をちょっと? かなり? 辛口で切り取ります
前田行紀
シュワリスタ・ラウンジではシャンパーニュ・アーカイヴのデータ作成を担当。豊富な知識と旺盛な探究心で、「シャンパーニュの求道者」の異名を持つディープ・シュワリスタ。このコラムでは泡業界を愛と俯瞰、両面で斬っていく。
Vol.10
悲劇のシャンパーニュ
07.9.21 up
残暑も徐々に薄れてきた今日この頃ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
秋は3連休もあり、海外脱出や国内での旅行を考えている方も多いと思います。リゾートに行かれるのであれば、ビーチやプールでシャンパーニュをぜひ。それだけでも少し贅沢な気分になれるので試してみてください。

さて、今回はあまりにも有名なこのシャンパーニュについて取り上げましょう。ある有名メゾンのある有名な一つの銘柄のシャンパーニュ。そう、モエ・エ・シャンドン社の造るプレスティージュ・シャンパーニュであるドン・ペリニヨンです。

その使われ方といいますか…バブル全盛期や夜の世界では圧倒的な人気を誇っていましたのでシャンパーニュに詳しくない方も名前くらいは知っているのではないでしょうか。日本でも最も知名度の高いシャンパーニュの一つと言えるでしょう。むしろ、モエ・エ・シャンドンよりも、ドンペリという名前のほうが、一般の知名度は高いかもしれませんね。

しかしこのドン・ペリニヨン、色々な所で話を聞くと実に面白い事実が浮かび上がってきます。
それはドン・ペリニヨンには高級なイメージを持っている人が多いのですが、その味わいに関しては驚くほど知られていない、または評価されていないということです。シャンパーニュ好きが集まるシャンパン・バーでも、どちらかというと人気のあるシャンパーニュではありません。ここにドン・ペリニヨンの悲劇があります。
ドン・ペリニヨンはモエ社のプレスティージュ・シャンパーニュで「最古にして最良のクリュ(葡萄園)から収穫された、確固たる葡萄の個性を持つワインを絶妙にアサンブラージュ(ブレンド)。フレッシュさを失うことなく、7年以上の歳月をかけた熟成を経て…」(ディアジオ・モエ・へネシー社のサイトより抜粋)と厳選されたグラン・クリュを使用し、通常ヴィンテージに設けられている3年の基準を大幅に超える長期熟成。

これだけの条件をそろえて美味しくなく造る方が難しいとは思いませんか? そう、ドン・ペリニヨンは間違いなく美味しいのです。ではなぜ? 原因として考えられるのは、知名度が高いゆえに、シャンパーニュの中でも愛好家だけではなく、多くの人が口にしたことがあるということです。つまり普段シャンパーニュを全く飲まない方も、口にしているわけです。

この現実がドン・ペリニヨンの味わいの評価を下げているのです。どういうことか? シャンパーニュを始めて飲む人やワインがあまり得意でない方がドン・ペリニヨンを飲む機会があったとして、果たしてその時点で美味しいと感じるでしょうか? もちろん感性は人それぞれなので、捉え方はそれぞれですが、おそらく答えはNOです。

というのも残念ながら、シャンパーニュが広まってきた日本においても、いまだにシャンパーニュは「甘口」と勘違いされている方がまだまだ多く、ドン・ペリニヨンのような風味のシャンパーニュが正当な評価をされていないのです。それでなくとも、ドン・ペリニヨンは他の数あるシャンパーニュに比べて難しいシャンパーニュだと言われています。出来の良い年だけに造る、長期熟成に耐えうるヴィンテージ・シャンパーニュであるため、発売されてから、飲み手がどのタイミングで飲むかによって大きく香りや味わいが異なってきます。そのため、普段シャンパーニュを飲みなれていない初心者では年代や熟成感による違いを判断することができず、その良し悪しの判断が難しいのです。

シャンパーニュ愛好家の方も、この機会に再確認してみるのも良いでしょう。飲みなれてきたからこそ、もう一度確認していただきたい。昔飲んだ時とは、きっと違った魅力を発見できるはずです。シュワリスタ・ラウンジでもドン・ペリニヨン99が楽しめるサンデーブランチをこちらで紹介しています。

それでは今宵も良い泡を。
SH

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