では何が問題なのでしょう。樽発酵・樽熟成の特徴としてはいくつかありますが、一般的に分かりやすいのは、ワインに樽の風味を持たせる事でしょう。しかしこの樽発酵・樽熟成を行っていると一言でいっても、一様な使われ方をしているわけではありません。全てのベースワインを樽発酵させているメゾンもあれば、一部を樽発酵させている、またはリザーブワインのみ樽熟成させたものを用いるメゾンまで様々です。樽を使用することはオークの香りをつけ深みを増すだけではなく、ステンレスとは違い、木の小さな隙間から入ってくる空気によってワインが緩やかに酸化する効果もあります。(マイクロオキシジネージョン効果)
これらの特徴は樽の大きさや、材質、古さ、過去に何が入っていたかだけでなく、使用するブドウによっても仕上がったワインに大きな差が出てきます。この感覚は1日2日で習得できるものではなく、満足のいく出来に仕上げるまでには何年もの試行錯誤が必要です。
安易な樽の使用はベースワインに強い樽香を付与する事にもなりかねず、テロワールが失われる可能性があります。つまり過度な樽熟成はシャンパーニュそのものの繊細な味わいを壊してしまう可能性があるのです。
樽発酵は手間もかかり、大手のメゾンが昔のように樽を使用するようになる事は恐らくありませんが、北米・日本での売名目的で安易に樽発酵・樽熟成を行って作ったシャンパーニュが出回らないことを祈っています。
本来樽は料理で言う調味料。あくまでメインは原料のブドウからできるベースワインなのです。
それでは皆さん今宵も良い泡を。
|